「胃瘻バッシング」という言葉がよく使われます。
マスコミなどが胃瘻のことを悪く言ったとのこと。
この2~3年胃瘻に関する話題がうなぎ昇りです。
普通の患者さんには、胃瘻=あまり良くないこと、
とインプットされたのでしょうか。
その結果、こんなことを言うひとが増えました。
「胃瘻は嫌だけど、鼻からの管ならいい」
「胃瘻は拒否しますが、頚からの点滴ならいい」
正直、訳が分かりません。
経鼻チューブの苦痛、中心静脈栄養の欠点を
克服する方法として、胃瘻栄養が進歩してきたのです。
しかし本末転倒のような話があちこちでおきています。
いくら説明しても、家族は
胃瘻=悪
鼻や頚の静脈=善、とインプットされているようです。
こうなると理屈では話が通じません。
根負けしてご家族の言うとおりに従うしかないことも。
理不尽とは思いながらも鼻や首の静脈から管理します。
正しく伝えることは実に難しい。
胃瘻が悪いわけでは決してありません。
生きて楽しむことができるのは、胃瘻さんのおかげ。
胃瘻を無差別攻撃しているわけではありません。
時期により、胃瘻の意義が違ってくるのです。
病期や関係性の中で、胃瘻の是非は変わってきます。
植物状態になった時、事前にリビングウイルがあっても
一旦始めた胃瘻は中止できない風潮があります。
まあ、これは病院だけの現象のようですが・・・
昨夜は、「在宅医療と栄養管理」という勉強会が
神戸で開催されました。
藤田保健衛生大学の東口高志先生とお話をしました。
東口先生は日本静脈栄養学会の理事長さんです。
胃瘻と人間の尊厳の両方に深い理解のある先生でした。
在宅医療の現場も詳しくご存知でした。
日本老年医学会から「延命治療からの撤退もあり得る」
というガイドラインが先日、出ました。
在宅現場も医学会も、明らかに変化してきています。
あとは、法律が要るか要らないか、です。
法律が無くてもいいというお医者さんもいます。
しかしその結果が、現状なのです。
先週の法制化議論は、「不開始」のみでした。
「中止」という文字はどこにも入っていません。
在宅では当たり前の現実にも、反対意見が出ました。
難病患者さんVS冷酷で悪い医者、という構図に
なってしまいましたが、不本意でした。
患者さんの人権を守るための法律なのですが・・・
患者さんの人権や尊厳が損なわれている、と強く感じます。
昨夜の勉強会でも延命の最期については医者は非力でした。
法律が無いと患者さんの人権を守れないと強く感じました。
今日から4月。
医療・介護の診療報酬規則が変わります。
事務員は不眠不休でレセプト作業に入ります。
私も朝一番から外来、新人医師指導、往診と
何かと忙しい新年度の始まりです。
気温の変化が大きいので皆様、ご自愛くださいませ。