《0714》 胃瘻は嫌だけど鼻ならいいという人 [未分類]

「胃瘻バッシング」という言葉がよく使われます。

マスコミなどが胃瘻のことを悪く言ったとのこと。

この2~3年胃瘻に関する話題がうなぎ昇りです。

 

普通の患者さんには、胃瘻=あまり良くないこと、

とインプットされたのでしょうか。

その結果、こんなことを言うひとが増えました。

 

「胃瘻は嫌だけど、鼻からの管ならいい」

「胃瘻は拒否しますが、頚からの点滴ならいい」

正直、訳が分かりません。

 

経鼻チューブの苦痛、中心静脈栄養の欠点を

克服する方法として、胃瘻栄養が進歩してきたのです。

しかし本末転倒のような話があちこちでおきています。

 

いくら説明しても、家族は

胃瘻=悪

鼻や頚の静脈=善、とインプットされているようです。

 

こうなると理屈では話が通じません。

根負けしてご家族の言うとおりに従うしかないことも。

理不尽とは思いながらも鼻や首の静脈から管理します。

 

正しく伝えることは実に難しい。

胃瘻が悪いわけでは決してありません。

生きて楽しむことができるのは、胃瘻さんのおかげ。

 

胃瘻を無差別攻撃しているわけではありません。

時期により、胃瘻の意義が違ってくるのです。

病期や関係性の中で、胃瘻の是非は変わってきます。

 

植物状態になった時、事前にリビングウイルがあっても

一旦始めた胃瘻は中止できない風潮があります。

まあ、これは病院だけの現象のようですが・・・

 

 

昨夜は、「在宅医療と栄養管理」という勉強会が

神戸で開催されました。

藤田保健衛生大学の東口高志先生とお話をしました。

 

東口先生は日本静脈栄養学会の理事長さんです。

胃瘻と人間の尊厳の両方に深い理解のある先生でした。

在宅医療の現場も詳しくご存知でした。

 

日本老年医学会から「延命治療からの撤退もあり得る」

というガイドラインが先日、出ました。

在宅現場も医学会も、明らかに変化してきています。

 

あとは、法律が要るか要らないか、です。

法律が無くてもいいというお医者さんもいます。

しかしその結果が、現状なのです。

 

先週の法制化議論は、「不開始」のみでした。

「中止」という文字はどこにも入っていません。

在宅では当たり前の現実にも、反対意見が出ました。

 

難病患者さんVS冷酷で悪い医者、という構図に

なってしまいましたが、不本意でした。

患者さんの人権を守るための法律なのですが・・・

 

患者さんの人権や尊厳が損なわれている、と強く感じます。

昨夜の勉強会でも延命の最期については医者は非力でした。

法律が無いと患者さんの人権を守れないと強く感じました。

 

今日から4月。

医療・介護の診療報酬規則が変わります。

事務員は不眠不休でレセプト作業に入ります。

 

私も朝一番から外来、新人医師指導、往診と

何かと忙しい新年度の始まりです。

気温の変化が大きいので皆様、ご自愛くださいませ。