患者さんの家の近くまで来ました。
最近はカーナビがあるので助かります。
昔は地図と睨めっこでしたが。
冷たい雨が降っています。
カルテと地図と医療機器を持つので傘が持てません。
大抵、雨に濡れながら患者さんのお家を探すハメに。
雨が降りそうな時はフード付きジャンバーを着ます。
いつも車に積んでいます。
研修医君は傘をさします。
狭い路地の中に目指す患者さんの家はあるようです。
しかし暗い夜道では、表札がよく見えません。
そもそも、表札があるかどうかも分かりませんが。
ウロウロしているうちに水溜まりに足が浸かりました。
研修医君の足です。
私も昔は何度も、足を取られました。
さて、やっとこさで患者さんの家を見つけました。
表札の名前は、患者さんの名前と違っていました。
恐る恐る呼び鈴を押すと家族が迎えてくれました。
ドアを開けると、いきなり犬が飛び出してきました。
危うく噛まれるところでした。
過去には、噛まれたことが何度かあります。
人懐っこい犬は私の臭い靴下をぺロペロ舐めまわします。
手を出すと手も舐められヌルヌルになってしまいました。
ビックリというか、なかなか患者さんに近づけません。
ようやく患者さんの横に「到達」しました。
クリニックを出て、20分が経過していました。
さて、これでゆっくり診察できます。
研修医君に、こっそり言いました。
なあ、「行く」と「来る」とでは大違いだろう。
往診の場合は患者さんに辿り着くまでが大変なんだ。
研修医君は「ほんとですねー」と呟いてくれました。
(続く)