《0748》 「行く」と「来る」では大違い  [未分類]

患者さんの家の近くまで来ました。

最近はカーナビがあるので助かります。

昔は地図と睨めっこでしたが。

 

冷たい雨が降っています。

カルテと地図と医療機器を持つので傘が持てません。

大抵、雨に濡れながら患者さんのお家を探すハメに。

 

雨が降りそうな時はフード付きジャンバーを着ます。

いつも車に積んでいます。

研修医君は傘をさします。

 

狭い路地の中に目指す患者さんの家はあるようです。

しかし暗い夜道では、表札がよく見えません。

そもそも、表札があるかどうかも分かりませんが。

 

ウロウロしているうちに水溜まりに足が浸かりました。

研修医君の足です。

私も昔は何度も、足を取られました。

 

さて、やっとこさで患者さんの家を見つけました。

表札の名前は、患者さんの名前と違っていました。

恐る恐る呼び鈴を押すと家族が迎えてくれました。

 

ドアを開けると、いきなり犬が飛び出してきました。

危うく噛まれるところでした。

過去には、噛まれたことが何度かあります。

 

人懐っこい犬は私の臭い靴下をぺロペロ舐めまわします。

手を出すと手も舐められヌルヌルになってしまいました。

ビックリというか、なかなか患者さんに近づけません。

 

ようやく患者さんの横に「到達」しました。

クリニックを出て、20分が経過していました。

さて、これでゆっくり診察できます。

 

研修医君に、こっそり言いました。

 

なあ、「行く」と「来る」とでは大違いだろう。

往診の場合は患者さんに辿り着くまでが大変なんだ。

研修医君は「ほんとですねー」と呟いてくれました。

(続く)