《0749》 素手で診察した結果は?  [未分類]

往診先の患者さんの訴えは「めまい」でした。

昨日の昼、座ってご飯を食べてからめまいが出現し

気分不良でそれから食べることができないとのこと。

 

今日も1日中、寝て様子を見てたが、改善せず、

明日は休日なので不安になり往診を依頼したと。

診察終了間際の往診はだいたいこんな感じです。

 

めまいで呼ばれることはよくあります。

家族が見守る中、丁寧に診察しました。

「素手」で診断しなければいけません。

 

患者さんは、進行したがんを患っているそうです。

がんは知っているが転移があることは知らないと。

ご家族がこっそり教えてくれました。

 

がん拠点病院で抗がん剤治療を受けて、1週間目。

この2週間はかなり弱ってほとんど歩いていない。

たしかに、手足はかなりやせ細っていました。

 

立たせてみました。

一応、立てますがちょっと不安定です。

目を閉じると、倒れそうになります。

 

左の聴力は落ちていました。

ただし、いつからなのかはハッキリしません。

耳鳴りは無いと。

 

血圧と脈は正常。

意識レベルや話し方も正常です。

一見すれば、何も異常がなさそうです。

 

問診と診察の結果、いくつかの病名が浮かびました。

 

1)良性発作性頭位めまい症

2)突発性難聴

3)メニエル病

4)小脳出血か梗塞

5)脳転移からの出血

 

1)かと思いましたが、4)の可能性もあります。

一応、もっともらしく研修医君にも説明しました。

 

正直、あまり自信はありません。

急ぐ問題は無いと判断し様子を診ることにしました。

これは単に経験と言ったほうが正直でしょう。

 

翌日、ご家族の車で、当院の外来に来て頂きました。

当院は、年中無休なので休日も放射線技師がいます。

CTの結果、脳に異常を認めず1)と診断しました。

 

めまい症の点滴をすると少し改善して帰られました。

このまま在宅で様子を見ましょうかと提案しました。

すると「そうですね」とご家族と喜んで頷かれました。

 

ところが翌日になると話が、ちょと違ってきたのです。

(続く)