《0075》 がん難民よりも深刻な「がん……」 [未分類]

「がん難民」という言葉があります。
しかし、がんは早期発見できれば、完治するものも相当数あります。
問題は、がんが不幸にして再発し、標準治療も効かなくなった患者さんです。

がんを扱う病院は、がん治療の数を求められますから、治療可能かつ、
手つかずのがんの患者さんを断る施設は、まずありません。
むしろ、喜んで(!?)受けてくれます。
ですから、「がん難民」の多くは「がん再発難民」というべき人たちでしょう。

もっと正確に言うなら、「がんが再発する」という言葉も怪しく、実は
初回の外科治療の時に、がんがどこかに潜んでいたわけです。
だから「再発」ではなく、「取り残し」と言うべきだという意見もあります。

少し前まで、PET検査を嫌がる外科の先生が結構おられました。
もし手術する前に遠隔転移が判明すれば、手術数が減ってしまうからです。
また手術直後にPET検査で陽性なら、「取り残し」が早期に明らかになります。

こうして考えると、「術前診断と初回医療」がいかに大切かが分かります。
発見時に、初回治療後の経過が、大体運命づけられている、と私は思います。

もちろん「医療の不確実性」と言われる要素も、考慮しなければなりません。
外科医に怒られるかもしれませんので、少しだけ擁護しておきます。
世の中に、「絶対安全」や「100%確実」なものはありません。

医療も全く同じです。
ゴルフの短いパットと同じです。
外科医も人間。
ブラックジャックは漫画の世界の幻想です。

手術してがんが再発したら、抗がん剤治療や放射線治療という標準治療を
行いますが、どこかで手に負えなくなり、「標準」の枠の外に落ちてしまいます。
そこに、医療者のフォローアップ、バックアップ体制がないことが、問題です。

病院の先生は、もはや治せない患者さんには、興味がなくなってしまう。
もしくは、治せないと分かっていても、認めたくない、のいずれかです。

一方、在宅ホスピス医は、緩和医療しか行わないことが普通です。
「緩和医療はしてほしいけど、がんの治療も続けたい」と願う人がほとんどです。
当然だと思います。
しかし、なかなか満たされません。

両者の連携が弱いことが、「がん再発難民」という言葉が生まれた背景です。
2人に1人ががんになると言われる日本人にとって、連携こそが最大の課題です。