《0750》 「今日の往診は結構です」 [未分類]

翌朝、看護師がご機嫌伺いの電話をしました。

「今日の御気分はいかかですか?」

「お陰さまで、かなり良くなりました」

 

良かった!と研修医君と喜びました。

大事に至ってなくて本当に良かった。

自分の診断は大きくは間違ってはいなかった。

 

ただ、めまいが起こる前から徐々に食が細くなり

家の中を歩くのがやっとの状態だったそうです。

胸水もかなりあるらしく肩で息をしていました。

 

電話で介護認定の有無を聞いてみました。

すると「介護保険?何ですかそれ?」

との返事が返ってきました。

 

40~64歳は介護保険の2号保険者と呼ばれます。

65歳以上は、1号保険者です。

1号保険者は、病名に関係なく介護認定がおります。

 

そもそも介護保険は入っているだけでは使えない。

介護認定を受けて初めて使えるような仕組みです。

さて2号保険者は、限定された病名だけ使えます。

 

末期がんの方は、介護認定が可能な病名の1つです。

要介護2以上なら介護ベッドのレンタルができます。

通常、ケアマネがそれを手配してくれます。

 

研修医君に、得意げに説明しました。

 

在宅医療って、こうして自然に始まるんだよ。

通常は外来で出会って徐々に在宅に移行する。

ケアマネさんが介護ベッドを入れてるんだよ。

 

午前の診察が無事終わり、午後から伺う旨の

電話を入れました。

いよいよ訪問診療の始まり。のはずでした。

 

病気が病気なのでこれから下り坂の一途。

めまいが在宅医療のスタートだったのだ。

病院からの紹介以外にこんな始まりもあるんだ。

 

往診だけでは、まだどうなるか分からない。

24時間連絡体制の契約をして、訪問診療が

始まって、初めて在宅医療と言うんだよ、と。

 

一生懸命、研修医君に在宅医療の基本を教えました。

 

ところが、出発しようという時、

ご家族から電話が入りました。

 

「今日の往診は結構です」

 

「・・・・」

 

(続く)