翌朝、看護師がご機嫌伺いの電話をしました。
「今日の御気分はいかかですか?」
「お陰さまで、かなり良くなりました」
良かった!と研修医君と喜びました。
大事に至ってなくて本当に良かった。
自分の診断は大きくは間違ってはいなかった。
ただ、めまいが起こる前から徐々に食が細くなり
家の中を歩くのがやっとの状態だったそうです。
胸水もかなりあるらしく肩で息をしていました。
電話で介護認定の有無を聞いてみました。
すると「介護保険?何ですかそれ?」
との返事が返ってきました。
40~64歳は介護保険の2号保険者と呼ばれます。
65歳以上は、1号保険者です。
1号保険者は、病名に関係なく介護認定がおります。
そもそも介護保険は入っているだけでは使えない。
介護認定を受けて初めて使えるような仕組みです。
さて2号保険者は、限定された病名だけ使えます。
末期がんの方は、介護認定が可能な病名の1つです。
要介護2以上なら介護ベッドのレンタルができます。
通常、ケアマネがそれを手配してくれます。
研修医君に、得意げに説明しました。
在宅医療って、こうして自然に始まるんだよ。
通常は外来で出会って徐々に在宅に移行する。
ケアマネさんが介護ベッドを入れてるんだよ。
午前の診察が無事終わり、午後から伺う旨の
電話を入れました。
いよいよ訪問診療の始まり。のはずでした。
病気が病気なのでこれから下り坂の一途。
めまいが在宅医療のスタートだったのだ。
病院からの紹介以外にこんな始まりもあるんだ。
往診だけでは、まだどうなるか分からない。
24時間連絡体制の契約をして、訪問診療が
始まって、初めて在宅医療と言うんだよ、と。
一生懸命、研修医君に在宅医療の基本を教えました。
ところが、出発しようという時、
ご家族から電話が入りました。
「今日の往診は結構です」
「・・・・」
(続く)