《0751》 65歳以上と65歳未満 [未分類]

訪問診療を断わられました。ドタキャンです。

研修医君は、「何故?」という顔をしました。

私は長年の経験から、ピンときました。

 

その患者さんは、64歳でした。

65歳以上の低所得者は、在宅医療の医療費は

1ケ月の上限は、1万2000円です。

 

しかし、64歳以下は3割負担になるうえ、

1ケ月の上限は約8万円に跳ね上がります。

その差は、天と地ほど大きい。

 

ましてその患者さんは自分ががんであることは

知っていますが、全身転移の事実は知りません。

家族からは、伏せるように強く頼まれています。

 

患者さんは、これからの医療費が心配なのです。

まだ何年も生きると思っているので100円でも

節約して生活しなければ、と考えるのは当然です。

 

介護保険も65歳以上と65歳未満では違います。

末期がんという事で認定を受けても、要介護1以下

だったら、介護ベッドを入れることも許されません。

 

ただ主治医が、特別に意見書を書けば許されることに

一応なってはいますが。

しかし患者さんには最悪、全額自費の説明も必要です。

 

いずれにせよ、

65歳以上と65歳未満、では

医療や介護の仕組みや負担がかなり異なるのが現実。

 

そもそも、医師や看護師が自宅にやって来る。

介護保険が使えるかどうか分からないのにベッドが入る。

それだけで患者さんの頭の中はもう充分にパニックです。

 

病気のことより、医療費や介護費の支払い額のほうが

気になって仕方がないのは当然理解できます。

よく医者と高級寿司屋は料金表が無いと言いますから。

 

そもそも「お車代」がいくらなのか皆目、見当がつかない。

蛇足ですがお車代の実費相当額の徴収が認められています。

当院では頂いていませんが、双方納得の上で頂くようです。

 

まあ、患者さん側としては医療費・介護費やお車代や

御礼などの段取りで、頭が一杯になっているようです。

当面のお金がどれくらい要るのか、見当がつきません。

 

さらに、信じられない言葉が発せらました。

 

「明日は、抗がん剤治療に行きます」

 

「・・・・」

(続く)