《0755》 スケジュール満杯の在宅患者 [未分類]

そのがん患者さんは、温熱療法も併用していました。

温熱療法とはがん細胞が熱に弱い性質を利用した治療法。

病巣を温めるとがん細胞が先に死んでしまうのです。

 

体を温めると良いことは、有名な事実です。

私も近所の塩サウナに患者さんを通わせて

いろんなデータを取った経験があります。

 

ヒートショックプロテイン(HSP)という

蛋白が体を温めると誘導され、免疫能が上がります。

温めることは、どんな人にも良い効果があるのです。

 

温熱療法は最初の8回は健康保険が効きますが

それ以降は自費になります。

8回目以降も自費診療で続けられてていました。

 

さて、そのがん患者さんは大変忙しいのです。

がん拠点病院に抗がん剤を打ちに行き、その合間に

免疫療法や温熱療法にも通われています。

 

1週間のうち、通常、使えるのは6日間です。

そのうち1日はがん拠点病院を受診し、あとの日は

免疫療法や温熱療法に出かけなければなりません。

 

我々在宅スタッフが日中に入れるのは3日だけ。

そこにヘルパーさんが入ったりデイケアが入ると

空いている日が週に1~2日ということもあります。

 

訪問診療日、訪問看護日の調整が意外と大変です。

温熱療法の感想を聞くと「気持ちいい」そうです。

しかし、大抵ぐったり疲れて帰ってこられます。

 

そこで看護師が点滴やマッサージをして体を癒します。

まるでボクシングのトレーナーのようです。

それがあるから複数の治療が継続できるのでしょう。

 

「なあ、研修医君。患者さんはとても忙しいんだ。

 在宅医療は患者さんのスケジュール把握から始まるんだ」

「そうですね、こんな治療法があるなんて知りませんでした」

 

外来抗がん剤治療、免疫療法、温熱療法と並行して行う

在宅医療もあります。

しかしそんな日々は、たいていそう長くは続きません。

 

しかも「痛み」という問題には、どこも担当しないので

在宅医が診ることが多いのです。

この末期がん患者さんも相当な痛みが始まっていました。

(続く)