《0757》 副作用対策も在宅医の仕事 [未分類]

末期がんとはいえ、いわゆる小康状態が2週間続きました。

胸水は順調に減りましたが脱水が進み体重は減少しました。

自宅でのがんとの闘病生活にちょっと自信をつけたようです。

 

しかし3週間目に入ったある日、電話がかかってきました。

「しんましん」のようなものが出ているので診て欲しいと。

研修医君を連れて、午後一番に往診しました。

 

新しく始まった分子標的治療薬の副作用による薬疹でした。

最近は抗がん剤に加えて分子標的治療薬を使うことが多い。

じゅうたん爆撃に加えて、ピンポイント攻撃で闘うのです。

 

ただし、皮膚の副作用が多いという特徴があります。

我々在宅スタッフも日進月歩の新しい分子標的治療薬

の副作用に関する勉強会を定期的に開いています。

 

病院の主治医に、その旨のFAXをしました。

こちらの判断で一旦中止を指示しました、と。

字が汚いので研修医君に代筆してもらいました。

 

皮膚症状は、休薬することで峠を超えました。

しかし今度は、頑固な便秘が始まりました。

どうやら下剤の量が足りなかったのです。

 

麻薬を使用中の患者さんには、吐き気止めと

便秘対策は必ずセットで行います。

しかしその基本が充分ではありませんでした。

 

訪問看護師さんが浣腸をしてくれました。

正確に言うと浣腸をしてから手で摘便してくれました。

見事な手さばきを、研修医君と感心して見ていました。

 

「医師の副作用対策が足りないと、このように

訪問看護師さんにご苦労をかけるんだ」

 

全く説得力の無い説明をしていました。

御家族が笑っています。

本当は患者さんに迷惑をかけているのに・・・

 

在宅医の仕事はボクシングのセコンド係りのようなもの。

だから、抗がん剤や麻薬や副作用対策が何より大切です。

額のうえの切れた傷をその場で処置するような感覚です。

 

「研修医君、副作用対策が在宅医の大切な仕事なんだ」

 

これは間違っていないと思います。

病院医療の裏方を支えることも大切な役割。

病院と地域の在宅医が協力する時代です。

 

しかし、そうこうしているうちに

今度は呼吸困難を訴えるようになりました。

 

「研修医君、酸素、どうする?」

(続く)

 

PS)

昨日は母の日でしたね。

私は普段何も親孝行していない母親にほんの少しだけ

罪滅ぼしをしていました。

 

要介護状態の方は、ドライブがとても好きです。

家の近くをドライブするだけで凄く喜んでもらえました。

こんなに喜ぶのなら、もっとドライブに連れて行かねば。

 

実にお恥ずかしい話ですが、そんなことを感じました。