《0766》 傾眠状態が理想的 [未分類]

貼る麻薬と肛門から入れる頓服麻薬で

末期がんの痛みは、ほぼ消失しました。

もはや、がんの治療は諦められました。

 

自然な脱水で、浮腫みもありません。

胸水や腹水も問題が無くなりました。

食事は少しずつ分けて食べています。

 

本人に聞いてみました。

 

「今、何がしたいですか?

 日々の楽しみは何ですか?」

 

「・・・寝たいです・・・」

 

「温泉でも行きたいですか?」

 

「・・・行きたくありません・・・」

と言いながら、ウトウトまた眠りはじめました。

 

ここで研修医君に聞きました。

 

「こんな意識レベルを何と言うか知っているかい?」

 

「傾眠状態ですか?」

 

そう、放っておいたらウトウト眠る状態です。

呼べば瞼を開いて返答するが、放っておくと

すぐにウトウトする状態。

 

夜は孫が来たので大変喜んで、沢山話をしました。

お孫さんが買って来たマグロの握りを食べました。

結構、元気そうだったのに、昼間はウトウトです。

 

研修医君に、説明しました。

 

「終末期になると昼夜逆転することが多い。 

 傾眠状態が多いけれど、仕方がないんだ」と。

 

「じゃあ、患者さんは辛いんですか?

 尊厳はあるのですか?」

 

「苦痛は無いし、尊厳はある。

患者さんは痛がっていないだろう?

 傾眠状態が理想的だと思うんだよ」

 

「ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「傾眠状態ということは、あと数日ということなんだ」

 

「えー」研修医君は驚いて私を振り返りました。

 

(続く)