《0781》 医師法20条さまさま [未分類]

研修医君に医師法20条について教えました。

「これは医者なら最低限知っておくべき法律なんだ。

この法律があるから安心して在宅看取りができるんだ」

 

「昨日の夕方、患者さんを最後に診察しただろう。

 午前2時に亡くなられたがそれは何時間後だ?」

 

「10時間後ですね」

 

「そう最後に診てから24時間以内に亡くなられた時、

 医師はそこに行かなくても死亡診断書を書けるんだ。

 凄い法律だと思わないか」

 

「長尾先生、それはちょっと違うんじゃないですか?

 24時間以内に診ていないと死亡診断書を書けない

 というルールではないんですか?。

 この患者さんは診ているので書けますが・・・」

 

「それって誰に教わったの?」

 

「誰って、病院の指導医がいつもそう言っています」

 

「それが間違いなんだ。多くの医師が誤解している。

 24時間ルールというのは、行かなくても書ける

 という意味なんだ。分かるかい?」

 

「いやー、とても信じられません」

 

研修医君は、疑り深い顔で私を見ました。

町医者はあまり信用していないようです。

同じ医者でも病院の医者の方が信頼されます。

 

「信じようが、信じまいが、これは法律なんだ。

 昭和24年の法律が現代にも生きているんだ。

 60年前の法律のおかげで看取りができるんだ」

 

無医村や雪国や離島を想定してできた法律なのでしょう。

当時は医者も少なく全ての看取りに医者が行けなかった。

そして当時の法律が、現代までそのまま残ってしまった。

 

「長尾先生、そんな話、初めて聞きました。

 地域医療研修に来て本当によかったです。

 しかしその法律がなぜ大切なのですか?」

 

「24時間以内に診ていれば行かなくてもいい。

 すなわち、臨終も臨終後も行かなくてもいい。

 実際は行くけれどね。要は時間がかかってもいい」

 

「なるほど。

 臨終には医者がいないといけないと思っていました。

 病院ではそれが常識ですから」と、研修医君は納得。

 

「在宅では一人ではすべてにそんなことはできないよ。

 何せ体はひとつだから、すぐに行けないこともある。

 しかし、医師法20条があるから助かっているんだ」

 

「きっと時代は、昭和に回帰しているんじゃないかな?

 在宅看取りも医師法20条も偶然にも同じ方向を向いてる。

 オールデイズ3丁目の夕日の世界に回帰しているようだね」

 

まさに医師法20条という古い法律のおかげで

患者さんは安心して自宅で最期まで過ごせます。

私は「医師法20条さまさま」と感謝しています。

医師法20条

「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない」

 

PS)

昨日は、超党派議員121人で構成される尊厳死法制化議連の

今年2回目の総会が開催され、活発な議論が行われました。

 

延命措置の不開始と中止の2つの法案の素案が提示され、

日本医師会と日本弁護士連合会から様々な意見が出ました。

 

尊厳死法制化というと何か怖いイメージがあるでしょうが、

リビングウイル(LW)を持つ人の権利を担保する法案です。

日本尊厳死協会員12.5万人は、全国民では0.1%です。

 

ちなみにアメリカでは41%の国民がLWを表明しています。

LW法を制定している国は、20ケ国。

日本は世界的に見れば、LWに関しては最後進国なのです。