《0794》 交通事故で突然の全身麻痺に [未分類]

今回の世界大会には、日本尊厳死協会の会員である

松尾幸雄さんも富山県から参加されました。

大会初日、なんと英語で講演されました。

 

演題は、「A Long Way to Euthanasia in Japan」

 

直訳すると、「日本における安楽死への遥かなる道」でしょうか。

本来は尊厳死と言いたいところですか、安楽死を使ったようです。

松尾さんのおかれている状況と気持ちの揺らぎをお話されました。

 

日本における交通事故被害者の問題と尊厳死問題の

両方が、世界という場において、発信されました。

今日からしばらく松尾さんのお話しをご紹介いたします。

 

松尾さんの奥さんは、62歳の時に交通事故に遭いました。

なんとか一命はとりとめたものの、全身麻痺となりました。

以来、話すことも、食べることも、身体を起こすこともできません。

 

寝がえりを打つことも、指先や足先を動かすこともできません。

ベッドの上で仰向けになったまま闘病生活を続けておられます。

奥さんが唯一自分の意思で動かすことができるのは、まぶただけ。

 

松尾さんは商社マンとして30年間、日本とアメリカを

行き来する生活でした。

そんな松尾さんに、ある日、晴天の霹靂が起きたのです。

奥さんの松尾巻子さんは人工呼吸器と人工栄養で生きています。

1日3回、胃ろうから栄養剤を注入します。

1日のカロリーは900キロカロリーです。

 

少ないと思うかもしれませんが、動かないのでそれで充分です。

自発呼吸が無いので気管切開し人工呼吸器が装着されています。

1時間に1~2回程度、痰の吸引が必要なので目が離せません。

 

事故などで頸椎を損傷するとこのような状態に陥ります。

幸い意識は清明で、思考や意思表示はしっかりできます。

「レッツ・チャット」という会話補助機で意思疎通が可能。

 

ALS(筋委縮性側策硬化症)という神経難病に似ています。

おそらく療養生活だけ見れば区別がつかないかもしれません。

難病は徐々に進行しますが、交通事故は一瞬でそうなります。

 

巻子さんは事故の2週間前、初孫を抱っこしたばかりでした。

松尾さん夫妻はまさにある日幸福の絶頂から転げ落ちました。

それをどう受け止めるのか?怒りはどこに向けたらいいのか?

 

さて加害者は、19歳の少年でした。過失割合は100%。

免許を取ったばかりの未成年者の居眠り運転が原因でした。

未成年ということで、判決は禁固2年執行猶予4年でした。

 

交通事故の被害者がまるで虫けらのように扱われている現実に

松尾さんはあまりにも刑が軽すぎるという疑問を持ちました。

さらに松尾さんを待ちうけていたのは自動車保険との闘いでした。

 

少年はいわゆる『無制限』と呼ばれる保険に入っていました。

すると民事訴訟に出て来るのは、保険会社の弁護士だけです。

無制限とは名ばかりで勝手に理不尽な制限をかけてきました。

 

松尾さんは、多くの交通事故被害者が直面する

いわゆる「2次被害」とも闘うことになりました。

奥さんの介護と保険会社との闘いです。(続く)