《0080》 独居の認知症患者さん [未分類]

独居の認知症患者さんが大勢おられます。
たとえ家族ががいても、諸事情があって同居できません。
家族が時々来たり、ほとんど来なかったり……。

認知症に加えて、目が悪かったり、耳が悪かったりします。
電話をかけても、呼び鈴を鳴らしても全く聞こえません。

合鍵をもらい、まるで盗人のように裏口から入ったりします。
家の中は無茶苦茶です。
数日前の食べ物が残っていたり、所々に便が落ちていたり……。
もちろん、ケアマネさんやヘルパーさんに入ってもらい環境を整えて
もらいますが、いたちごっこのような感じです。

いわゆる「ゴミ屋敷」の場合は、「開拓」と呼んでいます。
それでも、行くと笑顔で迎えてくれます。
本人は、この生活にすっかり満足しているようです。
「だったら、それでいいじゃない」とも思います。

しかし、火の不始末が心配です。
私より、ご近所の方のほうがもっと心配でしょう。
これさえなければ、独居でも在宅療養はどこまでも可能です。

岐阜の小笠原文雄先生が力説されるように、「独居の末期がん」の
在宅看取りが、充分可能な時代となりつつあります。

しかし、「独居の認知症」の終末期ケアや看取りはまだまだ未開分野です。
上野千鶴子氏が「おひとりさまの老後」という本を書かれていますが、
当然、認知症になる可能性も高まっています。

経済的理由や施設不足で、在宅療養を余儀なくされる老人が増えています。
「都会の中の孤独」は、介護保険制度によって少し救われています。
しかし、介護保険料を滞納している人には、救いの手が入りにくい場合もあります。

「認知症になっても住み慣れた自宅でその人らしく暮らす」のは、本当に可能か?
「無縁社会」という言葉が、心に沁みます。
「独居の認知症」が、普通になる時代が来るのかもしれません。