《0801》 2つの嘱託殺人事件より [未分類]

【妻「もう限界。お父さんお願い」

 夫「今まで長い間つらかったね】

 

これは、2010年3月6日の朝日新聞の

社会面に掲載されたある記事の見出しです。

犯行直前の夫婦のやり取り。

 

前日の3月5日に横浜地裁で下された嘱託殺人罪の

判決結果を使える記事でした。

もちろん松尾さん夫妻のことではありません。

 

裁判長は情状酌量を述べ、被告の男性(66歳)に

懲役3年、執行猶予5年を言い渡しました。

実はこの5年前に最初の「事件」と「裁判」があった。

 

2004年8月、男性の妻が40歳の長男の「安楽死」の

求めに応じて人工呼吸器の電源を切った事件と裁判です。

長男はALS(筋委縮性側策硬化症)で長年寝たきりでした。

 

これが最初の嘱託殺人で、懲役3年執行猶予5年の判決。

そしてその5年後、今度は息子を失った夫婦の間で再び

「嘱託殺人事件」が起きてしまったのです。

 

息子とともに死にきれなかったことを悔やむ妻に懇願された

夫は2009年10月、乞われるまま妻の首に包丁を刺した。

その直前の言葉が、冒頭の会話だったそうです。

 

子を思う親の気持ちと、夫婦の愛情が見え隠れする

2つの嘱託殺人事件。

みなさまは、どのように感じるでしょうか。

 

何か救済策はなかったのでしょうか。

人は自らの生と死のあり方を選ぶことは

できないのでしょうか・・・

 

「巻子の言霊」の著者である柳原三佳さんは、この記事を

幸郎さんに送るべきか迷ったものの、結局送れなかったと。

巻子さんが、一度だけ「ころしてください」と発したから。

 

柳原さんはその後「リビングウイル」という言葉を知った。

松尾さんは、1992年にアメリカで作成していたのです。

巻子さんの件のあとには、日本尊厳死協会にも入会された。

 

嘱託殺人という悲しい事件を知る度に「リビングウイル」と

いう言葉が頭をよぎるのは、私も同じです。

「法」は時に追い詰められたひとを救うこともあるはずです。

 

今月、日本尊厳死協会・副理事長を拝命したばかりです。

「リビングウイル協会」と言った方が、分かり易いかも。

でもこの「リビングウイル」という言葉、実はかなり奥が深いです。

(つづく)