《0802》 「リビングウイル」の日本語訳は? [未分類]

「リビングウイル」とは、直訳すると

「生きている時の意思」となるそうです。

しかし「生前の遺言書」と言った方が分かり易い?

 

私はよく「遺言は死んでから効力が発揮しますよね。

でもリビングウイルは、生きているうちに有効です。

生者の意思表示です」、という説明をしています。

 

遺言書とリビングウイルの違いを強調してきました。

 

自分で話しながら、どこかしらもどかしい感じもします。

遺言と違う、といいながら遺言という言葉を使っている。

言葉を残すのだから「遺言」でもいいような気もします。

 

私は人間の尊厳の観点からリビングウイルを考えてきました。

しかしよくよく聞いてみるとそうでもない人が多いようです。

ここで、2009年7月に起きた事件をご紹介します。

 

借金などを苦にした40歳の男性が自殺を図りました。

一命は取り留めたものの、延命処置が続けられました。

しかし自殺未遂には、健康保険は適応されないのです。

 

男性の妻は、病院から「7月の治療費が500万円かかる」

との説明を受け、「自分が呼吸器を外す」と訴えました。

その10日後、男性の実母(67歳)が息子の左胸を刺した。

 

家族は医療費を心配して殺人事件を起こしたわけです。

松尾幸郎さんも、実は、自分が植物状態になった時の

医療費を心配して56歳の時にリビングウイルを表明。

 

私自身は、純粋に「生の尊厳」ばかり考えてきました。

しかし、いろいろとお話を伺ううちに、リビングウイルを

表明する方の根底に医療費問題も大きいことに気がついた。

 

こうしてお金の話を書くと「貧乏人は死ねというのか」

とか必ず言われます。

胃ろうの話なら「年寄りは死ねというのか」と言われます。

 

ですから、お金の話は極力しないようにしてきました。

しかし現実問題としてお金のことに触れない訳にはいけません。

松尾幸郎さんとお話していて、それを確信しました。

 

では社会保障が充実してお金の問題が全く無かったらどうか。

その時にはリビングウイルなんて必要無くなるのでしょうか?

いや、そんなことはあり得ません。

 

と考えると、リビングウイルの根底はやはり「尊厳」です。

決して、お金の問題ではありません。

しかし現実にはお金の問題も絡んで来るということでしょう。

 

結局実母は、懲役3年執行猶予5年との判決を受けました。

松尾幸郎さんも、この事件にショックを受けた一人でした。

松尾さんが示すリビングウイルのポイントは、以下の3点。

 

1)本人の頭がしっかりしているときに、意思表示の内容を

具体的にしておくこと。

2)自分の意識が清明ではなくなった時の代理人を

優先順位をつけて委任しておくこと。

3)延命処置を中止した医師の免責条項を入れておくこと。

 

3)は、まさに尊厳死協会がこれまで取り組んできた課題です。

法律による担保が無いとやはりダメなのです。

医学会のガイドラインと法律は車の両輪というのが私の主張です。

 

さらに、「尊厳死」と「リビングウイル」は厳密に言えば

同一の思想ではありません。

非常に近いのですが、もう少し、考察が必要です。

 

 

私事ですが、この4ケ月間、一冊の本を書いてきました。

寸暇を利用して書き綴り、やっと最終段階まで来ました。

「平穏死10の条件」という本が7月20日に発売予定。

 

その帯の言葉が、今日、決まりました。

「自分の最期は、自分で決める!」

リビングウイルを考えていて、ふと浮かんだ言葉に決めました。

(つづく)