《0822》 30年経っても変わらない総合医議論 [未分類]

東京大学で開催された第一回Generalist Japan 2012には、

全国から総合医が集まり、総合医について議論しました。

私も貴重な休日を1日半潰して拝聴しました。

 

総合医とはなにか?

何を勉強すれば総合医になれるのか?

泌尿器科や眼科医は総合医になれないのか?

 

さらに、総合医、総合診療医は違うのか?

病院総合医と、地域のかかりつけ医は違うのか?

これからどうすれば総合医は日の目を見るのか?

 

これらの議論は面白すぎて、上手く書けません。

しかし、私なりに批評すれば、

「総合医による総合医のための総合医議論」に感じました。

 

年を取れば病気が増えます。

65歳以上になれば平均3つの病気を抱えるという。

では、90歳なら病気は5つ以上あるのが普通だ。

 

5つの医療機関からそれぞれ5種類、合計25種類の薬が出る。

それぞれの専門学会のガイドライン通りの処方ばかりが各5つ。

でも、本当にそれでいいのでしょうか?

 

25種類投薬の患者さんが、もし私一人にかかれば3種類に減る。

製薬会社は泣くだろうが、患者さんは喜びメリットも大きいはず。

しかしそんな当たり前の医療が、日本では誰も出来ないのが現状。

 

私のイメージする総合医は、

・ある分野の専門性も持っている

・充分に科学的思考ができる

・Generalistとしての腕がいい

・お薬の副作用の知識が豊富

・患者や家族の話に耳を傾けて、物語を大切にできる

・何よりもGeneralistが楽しく誇りを持っている

 

なんだか自分のことばかり書いてしまいました。

 

「宣言すれば1秒で総合医になれるか?」という問い

を発した面白いシンポジスとがいました。

彼は、「総合医と名乗った瞬間から総合医でいい」とも。

 

この極論には当然、多くの反対が出ました。

質の担保をどうするのか?

そんなんじゃ困る・・・

 

どれも、もっともなご意見です。

 

しかし、私に言わせれば、

「いつまでこんな議論をしているのか?

 30年前と全く変わっていないじゃないか!!」

 

プログラムには「日本初、総合医の円卓会議」と書いてます。

考えようによっては、あまりに皮肉な企画名です。

確かに今ごろ日本初、と言われてもどこかしっくり来ません。

 

もっとも30年前より医療技術が各段に進歩したため、

それを統合する技術も数段難しくもなっているのです。

医療が進歩するほど「総合」は困難な作業になります。

 

病院の先生が多かった。

私のような診療所の医師は、10人もいなかったでしょうか。

大学や大きな病院の総合診療科のエライ先生が多い印象だった。

 

こんな理屈ばかりこねているから30年間も進歩しないんだ!

だから100点を取ろうとして、30点も取れないんだ!

とりあえず60点でも充分、であることを共通認識にせよ!

 

こんなエライお医者さんだけでなく、

一般市民や患者さんの声にもっと耳を傾けるべきではないのか?

もっと「まじくら」ないと、本物の総合医が育つはずがない!

 

そんな野次を飛ばそうとも思いましたが、拙書発売の前日

だったので、さすがに自制し、大人しく座っていました。

しかし総合医と言われれば、黙っていられないのが私です。

 

名刺交換した医師に、総合医に関する拙書を送ります。

「人を診る」ということを看板に掲げて今日まできました。

最初は、こんな当たり前の看板を掲げる自分が恥ずかしかった。

 

しかし最近は、堂々とこれを語れる年代になりました。

30年経っても全く「人を診る医療」になっていないからです。

ならないどころか、間違いなく「逆行」しているように感じます。。

 

臓器別縦割りで、人を診ることからは後退する一方です。

専門医志向の医師が増え、総合医志向は日の目をみない。

なによりも患者さんの専門医志向が、加速する一方です。

 

その結果が、「平穏死できない現実」でもあるわけです。

我田引水で恐縮ですが、拙書に書いた現実の本質はココ。

こうした現実を直視するところから総合医議論が始まる。

 

アメリカでは、大半が総合医だそうです。

しかし収入は、専門医の半分程度だとか。

それでは「専門医の下」と見られますが仕方がありません。

 

日本は、もしかしたら逆かもしれませんね。

開業医の年収と勤務医のそれを単純比較することはできないが、

少なくとも、米国の総合医より恵まれているのかもしれません。

 

いま、日本では多死社会を前に10万人の総合医が必要と表明。

総合医まさに国民のニーズなのです。

しかし現実は、まだまだお寒い現状です。

 

一昨日、全国から集まったのは100人足らず。

しかし若い医師が多かったことが、唯一の「光明」でした。

私は、集会の中で5本の指に入るくらいの「年寄り」でした。

 

まあ、まじくるのだから、歳は関係ないはずですが。

ようは General mind の問題です。

一人、尼崎の研修医が来てたことが最大の収穫でした。