何十年も夫婦で喫茶店をしている患者さんがいます。
ご夫婦とも、重大な持病をお持ちです。
しかし治療を受けながら喫茶店を続けておられます。
もう止めた方がいいんじゃないか。
相談されて、そう答えたこともありました。
ある日、往診依頼があり、診にいきました。
なんとカウンターの中でコーヒーをたてていました。
膝が悪く外出はできませんが、狭いカウンター内の
仕事なら、短時間なら可能です。
その喫茶店は、夕方になる前に閉まってしまいます。
なじみ客のための憩いの場、という雰囲気です。
閉店前に訪問すると、コーヒーを入れてくれました。
旨い!
さすが、この道、何十年。
お世辞ではなくそう感想を言いました。
来週は、しばらく店を閉めると言われました。
一方が、入院加療するのです。
1人では店を開けることができないのです。
残る方の在宅医療を依頼されました。
カウンターでコーヒーを入れた後、血圧を測りました。
お客さんは笑っているけど、本人は大喜びです。
実は、職場に往診することはよくあります。
死ぬ直前まで職場で寝ていたひともいました。
それが、その人の居場所なのです。
80代半ばでも立派に仕事をしている。
介護認定を受けながらも、職業がある。
そんな老人もおられるのです。
「自分のできる範囲で働きたい」
そう言う高齢者が実に沢山おられます。
自営業者はその点、恵まれていますね。
定年で仕事を辞めて悠々自適で過ごす自由も
死ぬまで自営業で働く自由もあると思います。
みなさんは、どちらでしょうか?