《0828》 2つの「24時間」 [未分類]

終末期に転倒して、頭部外傷で救急搬送される方がいます。

最悪、頭蓋内出血で、即死に近いかたもおられるそうです。

先日、東京下町の有名な脳外科の先生にお聞きした話です。

 

その場合、救急医は、死亡診断書を書くことは難しいと。

病死か事故死かはたまた犯罪なのか全く分からないから。

医師法20条はあくまで、ずっと診てきた場合の話です。

 

救急外来で心停止した頭部外傷患者さんの死亡診断は難しい。

前後の事情が分からないので、警察に見てもらうそうです。

後でトラブルになった時を想定するとそうせざるを得ない。

 

「医師法21条」という法律があります。

行き倒れのような死因が良く分からない人を見た時は

医師は24時間以内に警察に届け出て下さいねという法律。

 

これは、日本法医学会が病院内で死因がよく分からない死亡

を見たときにも、警察に届けるべきとの見解を示しました。

病院に警察が入るようになったのは、それからなのです。

 

それまでは、病院と警察は無関係でした。

病院は医療。警察は犯罪捜査。

本来、両者は別々のもののはずでした。

 

しかし医師法21条の拡大解釈から警察が入るようになりました。

現在では、病院長が頭を下げるテレビシーンが日常になりました。

同時に、医者は、頭を下げない医療に専心するようになりました。

 

昨日、本日、と本ブログを読んで頂いた方の中には

「たしか昨日も24時間、って書いてあったな」

と気がつかれた方もおられるかと思います。

 

そう、昨日紹介した医師法20条にも24時間があります。

しかし21条の24時間とは、全く違う24時間なのです。

こうして以下のような「誤解」が都市伝説になっています。

 

「ワシはこの患者を24時間以内に診ておらん。

 だから警察に届けなければならんのだ。

 死亡診断書を書いたら罪に問われるのだ」と。

 

このように誤解している医者が多いこと。

もちろん、在宅で病気の終末期に亡くなった時の話です。

私の講演では必ずこの法律の話を入れます。

 

紛らわしいのは、

・医師法20条、21条と続いていて、

・どちらにも「24時間」という数字がある、点。

 

本来、2つの「24時間」は全く無関係。

しかし、いつの間にか、24時間ルールが独り歩きし

誤った都市伝説として、信じられているようです。

 

そうして、多くの医者も、誤解を信じているのです。

医師が知らないのだから患者さんが知るわけが無い。

誤解が独り歩きしいつしか在宅看取り=警察沙汰に。

 

ですから、「平穏死・10の条件」の9番目には、

「24時間ルールを誤解するな!

 自宅で死んでも警察沙汰にはならない」と書きました。

 

しかし、冒頭書きましたように、終末期の方が頭部外傷が

原因で亡くなられた場合が、とても悩ましいのです。

現実には、警察沙汰にしないと医師は守られないのです。

(つづく)