先日、ある医学研究会に参加しました。
難しい研究の話を聞きながら寝そうになりました。
しかし途中で急にグループホーム(GH)の話に。
アルバイトでGHの訪問診療をやっているとのこと。
「へー、大学教授がGHで診察をする時代なんだ」と
変に感心しながら聴いていました。
そしてなんとGHでの排泄に関する研究を発表されました。
衰弱しても、手で引いてトイレに行かせると長生きする?
この話あたりから、身を乗り出して聴いてしまいました。
さらになんと、この教授は在宅医療までやっていたのです。
自分が看取った10人の患者さんについて話し始めました。
そして講演の最後に看取りの失敗例を正直に話されました。
終末期の患者さんがポータブルトイレで用を達している間に
絶命したそうです。
配偶者は、慌てて救急車を呼びました。
教授の携帯電話にも連絡があり、自分の大学病院の
救命救急部で患者さんと配偶者に会われたそうです。
しかしその時は、既に救急医の死亡診断の後でした。
さて問題は、これからです。
救急医は死亡後しか診ていないので死亡診断書は書けないと。
そこに警察がドカドカ入ってきて取り調べが始まったそうです。
その教授と配偶者は、別々の部屋に移され「事情聴取」が開始。
教授はしばらくして、「帰っていい」と言われたそうです。
しかし配偶者は事情聴取の後、自宅に警察に連れて行かれた。
なんと「現場検証」のためだそうです。
結局、配偶者は大変辛い思いをされました。
教授の結論はこんな感じでした。
「老老夫婦だけの場合の在宅看取りは難しい」
私はのけぞって、こけそうになりました。
何百人もの真面目なお医者さんは黙って聞いています。
たまらずに少しだけコメントしましたが無反応でした。
医師法20条と21条の誤解が、ここにもあった。
その教授が死亡診断すれば、警察は関係無かった。
しかしそれは法律に少々自信が無いとできない?
多くのお医者さんは、法律を誤解しています。
一 24時間以内に診ていないと死亡診断書を書けない
一 24時間以内に診ていないと警察に届けなければならない
この2つは、完全な誤解です!
誤解の都市伝説です。
どうかこのブログを読んで頂いているみなさまは、
これが間違いであることを知っておいてください。
さて、国会で議論中の社会保障・税一体改革法案ですが、
「社会保障・税一体改革推進法案」の中、第6条の三には、、
以下のように書かれています。
「医療の在り方については、個人の尊厳が重んぜられ、
患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、
特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる
環境を整備すること」
この文言をゆっくり噛みしめて読んでみてください。
その割に、法律の周知が不十分だと思いませんか?
医者も知らない法律を、市民が知るはずもない・・・・
実は、本日の午前10時5分~55分にかけて、
私の医局の後輩の国会議員が、以上の論点について
国会質疑を行う予定です。
10時40分あたりから、法律に関する質問だと思います。
おそらく「平穏死」に関する国会質疑ははじめてではないか。
テレビの生中継を見れないひとは、後で、ネットでゆっくり
見てくださいね。参議院で検索してください。
医学会のガイドライン整備と、法律の整備と周知は、
社会保障・税一体改革の両輪であるべきだと思います。
最後はちょっと堅い話になって、スミマセン。