障害児のお母さんと診察室で話し込みました。
お盆で閑なので、笑いながら聞いていました。
ちゃんと本人の承諾を得てのご紹介です。
神戸の花火大会の帰りの、満員の臨時列車での出来事。
芦屋駅に近づいた時、突然どこからか異臭がしてきた。
「臭い駅があるんだなー」とお母上は思ったそうです。
ふと見ると、我が子が下痢便を思いきりおもらししていた!
偉いことや。
大量の下痢便はパンツを通過して床に流れ広がります。
まさに「悲劇」です。
お母さんは咄嗟に首にかけたタオルで床を拭き始めました。
驚いた周囲にいた満員の乗客は、どんな行動をとったのか。
みんなが、いろんなお掃除グッズを、差し出したそうです。
沢山のテイシュ、ビニール、タオル・・・
みんな持っているものを差し出したそうです。
余るぐらいに。
「ビニール袋、足りんやろ」と声をかけるオジサン。
浴衣を着ている若い女性たちも一緒に拭いてくれた。
テイシュは、周囲のほぼ全員が差し出したそうです。
「あちこちから手が飛び出てきて
まるで千手観音みたいやったわ」と。
次の駅で慌てて降りたそうです。
あまりの臭いだが、文句を言った人は皆無だったそう。
降りる時には「お母さん、頑張りや」と励ましてくれたと。
「夫に電話して甲子園駅まで車で迎えに来てもらった」
ズボンが汚れていてタクシーに乗れなかったそうです。
家に帰るとお母上のスカートもウンコで汚れていたと。
この話を聞きながら、嬉しくなりました。
日本人はまだまだ捨てたもんじゃない。
元来そういう民族なんだ。
助けあえば、なんとか行ける。
花火に酔いしれた帰りの満員電車での不測の出来事。
それにしても、いい話です。
善意の「千手観音」。
誰でにも、似たような失敗はありますよね。
この程度の失敗のない人間などいるはずがない。
問題は周囲がどう受け止めるかでしょう。
実は、先日書いたゲロの話は、阪急電車での出来事。
そして今日の話は、阪神電車での出来事。
それぞれにそれぞれの、人情があります。
実はこの数日、完全な寝不足です。
在宅が無茶苦茶忙しい。
携帯電話が寝る間を与えてくれません。
旅立ちが多い。
毎日、です。
やはり、誘われるのでしょうか。
そんな朦朧状態の頭のなかに、
「千手観音」のイメージだけが残りました。
疲れていても嬉しい話には元気をもらいます。