《0849》 下痢便が誘った「千手観音」   [未分類]

障害児のお母さんと診察室で話し込みました。

お盆で閑なので、笑いながら聞いていました。

ちゃんと本人の承諾を得てのご紹介です。

 

神戸の花火大会の帰りの、満員の臨時列車での出来事。

芦屋駅に近づいた時、突然どこからか異臭がしてきた。

「臭い駅があるんだなー」とお母上は思ったそうです。

 

ふと見ると、我が子が下痢便を思いきりおもらししていた!

 

偉いことや。

大量の下痢便はパンツを通過して床に流れ広がります。

まさに「悲劇」です。

 

お母さんは咄嗟に首にかけたタオルで床を拭き始めました。

驚いた周囲にいた満員の乗客は、どんな行動をとったのか。

みんなが、いろんなお掃除グッズを、差し出したそうです。

 

沢山のテイシュ、ビニール、タオル・・・

みんな持っているものを差し出したそうです。

余るぐらいに。

 

「ビニール袋、足りんやろ」と声をかけるオジサン。

浴衣を着ている若い女性たちも一緒に拭いてくれた。

テイシュは、周囲のほぼ全員が差し出したそうです。

 

「あちこちから手が飛び出てきて

まるで千手観音みたいやったわ」と。

 

次の駅で慌てて降りたそうです。

あまりの臭いだが、文句を言った人は皆無だったそう。

降りる時には「お母さん、頑張りや」と励ましてくれたと。

 

「夫に電話して甲子園駅まで車で迎えに来てもらった」

ズボンが汚れていてタクシーに乗れなかったそうです。

家に帰るとお母上のスカートもウンコで汚れていたと。

 

この話を聞きながら、嬉しくなりました。

 

日本人はまだまだ捨てたもんじゃない。

元来そういう民族なんだ。

助けあえば、なんとか行ける。

 

花火に酔いしれた帰りの満員電車での不測の出来事。

それにしても、いい話です。

善意の「千手観音」。

 

誰でにも、似たような失敗はありますよね。

この程度の失敗のない人間などいるはずがない。

問題は周囲がどう受け止めるかでしょう。

 

実は、先日書いたゲロの話は、阪急電車での出来事。

そして今日の話は、阪神電車での出来事。

それぞれにそれぞれの、人情があります。

 

 

実はこの数日、完全な寝不足です。

在宅が無茶苦茶忙しい。

携帯電話が寝る間を与えてくれません。

 

旅立ちが多い。

毎日、です。

やはり、誘われるのでしょうか。

 

そんな朦朧状態の頭のなかに、

「千手観音」のイメージだけが残りました。

疲れていても嬉しい話には元気をもらいます。