《0085》 介護者を癒す場「つどい場さくらちゃん」 [未分類]

介護は大変な仕事です。
どんなタフな人でも、介護期間が1カ月を超えると疲労が滲み出てきます。

末期がんなら、ちょうどここで介護が終わりになりますが、認知症介護は、
まるで「終わりのない旅」のように感じます。

介護者をサポートしたい!
そんな想いで丸尾多重子さんがボランティア組織を立ち上げ、現在は
NPO法人として兵庫県西宮市で活動されています。
「つどい場さくらちゃん」です。

5年前、初めてこの名前を聞いた時、
「何と力が抜けた飲み屋のような名前か」と笑いました。
しかし、一度聞いたら二度と忘れない名前ですよね。

毎日、認知症介護者が狭い一軒家にどこからともなく集まって、
手作りの食事をしながら、ワイワイガヤガヤ愚痴を言い合っています。
また、先輩介護者が後輩介護者に、介護のコツを伝授しています。

「お出かけタイ」「みまもりタイ」、そして「学びタイ」と、それぞれ立派に活動しています。
毎年開催される「かいご学会イン西宮」は、私もお手伝いする有意義な勉強会です。
「かいご」の意味は、介護の「か」、医療の「い」、そしてご近所の「ご」です。

2000年にできた介護保険制度で、確かに在宅療養が進歩しました。
「しかし同時に失われたものもある」と、丸尾さんは語ります。
それは「介護者同士のつながり」や「時間に拘束されないゆるやかな介護」
なのでしょうか。

確かに、介護者を癒す場が必要だと日々感じます。
ネグレクト、虐待、介護殺人、介護自殺などは決して他人事ではありません。
介護者本人が、自分の姿に全く気がついていない場合が多いのです。
だから介護者を癒すことが、認知症療養では実は最も大切です。
介護者が健康であれば、自然と患者さんにもいいエネルギーが伝わります。

特に「食事」と「会話」が大切だと、丸尾さんは教えてくれます。
丸尾さんに共感する人々が、各地でそれぞれの「つどい場」を作り始めました。
輪が少しずつ広がり、私も喜んでいます。
「つどい場」の皆さんが私に教えてくれることは、とても多いのです。

実は、私自身も疲れたら、秘かにここで羽を休めています。
ああ、ここで言っちゃたら、秘かでなくなるか。
まあ、不思議な場所です。

当院に来る研修医の在宅実習でもここに連れて行きました。
認知症の教授自身が、ここで研修するようになれば、日本の認知症医療、
認知症政策が少しは変わるかもしれません。