《0869》 AAA(スリーA)は怖い病気 [未分類]

AAA(スリーA)とは、腹部大動脈瘤の略語です。
昨日はプライマリケア連合学会が福岡でありました。
昼休みの勉強会は、私はAAAの部屋にいました。

みなさまの周囲にもAAAの人はいると思います。
結構多い病気ですが、その割に知られていません。
ある日、急に亡くなられた方に、この病気が多い。

司馬遼太郎もアインシュタインも
AAAで亡くなられたそうです。
みなさまもの病気について知りましょう。

高齢人口4000万人のうち
女性は1%、男性は8%が、
AAAを有しているそうです。

男女合わせると5%≒200万人もの
AAAの患者さんが我が国におられることになります。
決して稀な病気ではなくむしろ多い病気です。

AAAは動脈硬化で大動脈が1.5倍以上に拡張する病気です。
通常は1.5センチ以下ですが、3センチなら定期フォローが大切。
AAAの大半は無症状ですから、とても怖い病気なのです。

破裂した場合、生きて病院に到着する確率は50%。
さらに到着した患者さんの半数は院内で死亡します。
すなわち、破裂したら75%が死ぬ病気なのです。

今時、25%しか助からない病気があるのでしょうか。
考えてみると一番怖い病気かもしれません。
それだけ予防的処置が大切ということです。

心血管疾患との関連が深いことが分かっています。
心血管疾患の14%に、AAAが合併しています。
心血管疾患を見たらAAAを疑うことが大切です。

3センチのAAAは年に0.3センチづつ大きくなります。
5センチのAAAは年に0.5センチずつ大きくなります。
つまり、瘤が大きいほど増大速度が速くなる病気です。

推定破裂確率ですが、5センチでは年に5%が破裂します。
5センチ以上のAAAが5年以内に破裂する確率は25%。
7センチだと 75%に跳ね上がります。

瘤が大きいほど、破裂し易いのです。
従って大きくなったら早期に外科に紹介することが大切。
それよりAAAの存在を発見しておくほうが大切ですね。

60歳、高血圧、喫煙、とくれば、AAAを疑い、
一度は医師による腹部触診とエコー検査を受けるべきです。
エコーで5分で簡単に分かります。

当院でも偶然発見されたAAAの方をフォローしています。
大きくなり予防的に手術したひとも何人かおられます。
みなさん、手術後も元気にされています。

破裂したら手術しても半数は助からない病気です。
不思議なことに、この成績は20年間変わらない。
ダメな場合はダメなので、やはり予防に尽きます。

以下のAAAは、手術の対象になります。
 ○ 瘤が4~5センチ以上
 ○ 半年に5ミリ以上大きくなるもの
 ○ 腰痛などの症状があるもの

手術は、昔ながらの手術と新しい手術の2つがあります。
人工血管置換術と大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)。
後者は低侵襲で、高齢者や忙しい人に向いている手術法です。

EVARの手術時間は、1時間~1時間半と短く、
翌術から歩けます。
日本においてもこの手術が普及しつつあります。

とにかく破裂前に治療することが肝要です。
ただ高齢者にAAAが見つかる場合が、よくあります。
もし1年以上の余命があればEVARを考えてもいい。

検診で3センチのAAAが見つかれば、定期観察が必要です。
そして4~5センチ以上に成長したら血管外科を受診します。
まあ、いずれにせよ、禁煙が一番大切です。

《P.S.》
昨夜の「まばたきで愛していますー巻子の言霊―」は
いかがでしたか?
他局なので、敢えて詳細は書きませんでした。

おそらく何回か、再放送されると聞いています。
見逃した方は、またの機会に見てくださいね。
最後は私も泣きました。