《0870》 若き外科医に教える在宅医療 [未分類]

今週も、研修医の先生をお預かりしています。
初日は、私がつききりで教えることになっています。
その後は、いろんなスタッフが入れ替わりで教えます。

その研修医は、外科志望。
今時、金の卵、です。
そんな若武者と尼崎の街を回ります。

「息子さんですか?」と、訪問する家々で言われます。
これが一番こたえます。
本当は「弟さんですか?」と聞いて欲しいのです(笑)。

女性の患者さんは、必ず若い人のほう見ます。
普段は私を見向きもしない人が顔を向けます。
男も女も、みんな若さにあやかりたいのです。

さて外科医になぜ、在宅医療を教えるのか?
いろんな意味があります。
手術後の患者さんを家に帰す時に在宅になることもある。

がんが再発したり末期になれば在宅療養を希望される人もいる。
地域医療連携という言葉があるのですが、もはや病院だけでは
医療は成り立ちません。

いろんなお宅を回っているうちに在宅医療に興味を示しました。
まさか外科志望が在宅志望に変わらないか、妄想しました。
もし、そんなことを言い出したらどうしよう、かと。

「最低10年は病院に勤務して何らかの専門医を取ってね」
いつも研修医に、こう言います。
在宅医になるには、いろんな経験が必要なのです。

実は外科系から在宅医療に来られた先生の顔が沢山浮かびます。
手術で人を助けるつもりが助けられない人が多くて愕然とする。
そこで、ある時、在宅医に転向されるのです。

卒後10~20年目が、人生の分かれ道です。
一生外科医で行くのか、一般医、在宅医に転向するのか。
悩ましい選択に迫られます。

一生、外科医で過ごせる外科医は少数です。
教授や部長や院長になれる人です。
まあ、院長になれば手術ができませんが。

一生専門医で過ごせる医者は、5%もいるのでしょうか。
名誉教授や名誉院長にまで上り詰めた偉いお医者さんの
多くも余生を一般医として高齢者施設などで過ごされます。

40年間専門医としてその道を極められた先生が70歳を過ぎて
突如、老人医療に目覚めて、教科書まで書かれた先生もいました。
とにかく、医者が最後に行きつく先は老人医療、一般医なのです。

だから焦ることはない。
臓器も診るが、人間もしっかり診られる専門医になってね。
退院後の生活もイメージできる外科医になってください。

そんな話をしながら、尼崎の街を彷徨っていました。
本当は喉から手が出るほど若い先生に手伝って欲しいのですが。
なにせ、驚くくらい患者さんに喜ばれますから・・・