《0088》 看取られた死は、事件じゃない [未分類]

看取りに関する法律では、継続して診ていた患者さんがご自宅で、
その病気で亡くなったと推定される場合、24時間以内に診察していれば、
医師はその家に行かなくても、死亡診断書を発行できます。

しかしこれを、
「24時間以内に診察していなければ、警察に届けなければならない」と、
誤解している医師が何と多いことか。

終末期ケアについて講演すると必ず、この法律に関する質問を受けます。

特養などで施設内で老衰死されると、嘱託医は大慌てで警察に電話し、
施設にパトカーが何台も来て大騒ぎになった、と施設長さんが嘆きます。

残念ながら、その嘱託医が法律を知らなかっただけなのです。
法律では、「診に行かなくても診断書を発行できる」となっています。
くどいですが、本当に行かなくてもいいのです。

電話でご家族から、「○時○分に亡くなった」と聞いたら、
「分かりました。では書いときますね、事務員が届けますね」で法律上問題ありません。
実際には必ず行きますが、離島などを想定して、法律は、そうなっているようです。

こんなにも、法律がおおらかなことを、悲しいかな多くの医療者は知りません。
在宅医療を行っている医師でさえも、知らない人が相当いると思います。

自宅で安らかに息を引き取られた後、死亡診断書を書いて帰ろうとすると、
おもむろに訊かれることがあります。
「先生、これから警察に連絡しておけばいいですか?」
「???」

死は怖いもの、死は事件のようなもの、家で死ぬのは法律を犯している、
このような誤解、偏見を持っている人がいまだに多いと感じます。
予想された死は、自然なもの。
事件でも何でもない。
まして、警察なんて全く関係なーい。

朝一番に、ご家族から悲鳴の電話で起こされたことが何度かありました。
「先生、亡くなったので救急車を呼んだら、警察が来て、今取り調べられています。
助けてください!」と。
私は、「何で救急車を呼んだの?」

最近は「看取りと決めたら救急車を呼ばない」と、事前説明をしっかりしていますから、
このような事件(?)はなくなりました。
「救急車を呼ばない」ことの啓発は大切だと考え、冊子を作って各地に配っています。