《0882》 カプセルホテルで感じる非日常 [未分類]

日本尊厳死協会の常任理事会と、
もろもろの雑用を兼ねて東京に来ています。
秋の3連休で、東京はどこも大混雑です。

ホテルがどうしても見つかりません。
いつも行き当たりバッタリで宿泊します。
ところが今週末は、どうにもなりません。

ネットで都内のホテルを何時間も検索しました。
全くホテルの空きが都内に全く無いのです。
たまにキャンセル物件が1件出ても、瞬間的に売れる。

そうこうしている間に、午前零時近くになりました。
上野方面のカプセルホテルが一軒だけ空いていました。
仕方がないので今夜はカプセルにしようかと思いました。

「広い部屋、高級布団」との謳い文句にもひかれました。
昔のカプセルホテルは、狭くて板のような敷布団でした。
時代の変化を体感しようかと、一瞬、決断しかけました。

その瞬間、別のビジネスホテルに空室が表示されました。
結局そちらを選択し、わずか数時間の滞在を終えました。
ちょと残念な気分でした。

カプセルホテルといえば、大学病院勤務医時代に
実験で遅くなった夜などに、よく泊まりました。
最近では、数年前が最後の宿泊でした。

都内にいると、患者さんが気になります。
先日も深夜まで末期がんの患者さんのご家族と
最期の1週間の過ごし方について2時間話しました。

在宅看取りには、このように時間をかけた話合いが必要。
話し合っているうちに亡くなったあとの処置や葬儀の話になり
「先生、長い間ありがとうございました」と御礼を言われた。

「まだ、亡くなっていませんよー」で一同大爆笑。
亡くなる前から、こんな泣き笑いの日々です。
もちろん本人はウトウト寝ていて、余命数日とは知りません。

大きな家にお住まいです。
最初は日中は大きなお部屋で、過ごされていました。
徐々に体力が低下し、狭いお部屋で過ごす時間が増えました。

最近は、ベッドから離れる時間がほとんどなくなりました。
衰弱に比例して行動半径が徐々に狭くなってきました。
その推移は、ゆっくりゆっくりです。

人間は立って半畳、寝て1畳と言います。
カプセルホテルは畳一畳なのでまさにこの言葉のとおり。
人間は寝たら、一畳で充分なのです。

衰弱した方は、畳一畳の中で生活されています。
カプセルホテルも畳一畳の中で一晩過ごします。
手を伸ばせば何でもあるので、結構、快適です。

実は、カプセルホテルはどこかお棺にも似ています。
私にはちょっとした非日常、納棺体験でもあります。
貴重な機会を逃してちょっと悲しいような複雑な気分です。