《0889》 線維筋痛症と在宅医療 [未分類]

線維筋痛症という病気をご存知でしょうか?
全身の筋肉痛、こわばり、疲労感を訴える病気です。
近年、医学界でもこの病気が正式に認知されました。

我が国に200万人もの患者さんがおられるそうです。
そのわりには、市民や医療者の認知度が低い病気です。
私は専門家でもなんでもありませんがよく遭遇します。

若い女性が寝たきりになっているので往診してほしい。
そんな依頼を聞いた瞬間にこの病名が頭に浮かびます。
そしてそのとおりの診断がつき治療で良くなった人々がいます。

とにかく全身が激しく痛い状態が持続します。
尋常ではない痛がり方です。
手で触れようとしただけで(触れていない)痛がる人もいます。

特徴的な圧痛点が診断基準に挙げられています。
全身の18カ所の圧痛点を押していきます。
11カ所以上痛ければこの病気が疑われます。

8割が女性です。
20~60歳と比較的若い人に多いのも特徴です。
米国では、人口の2~4%を占めるとも言われています。

種々の痛み止め、抗うつ剤、ステロイドなどで痛みを抑えます。
私自身は、慢性疼痛という判断で、麻薬も積極的に使います。
とにかくいろんなお薬で痛みを抑えるのが治療の第一歩です。

この病気と知らずに、お医者さんを転々とする人がおられます。
どこに行ってもこの病気と認知されず、寝たきりになっている。
まず、診断を付けることからすべての物語は始まります。

最近、線維筋痛症に、脳下垂体や視床下部の異常を
合併した患者さんを2人発見しました。
もちろん専門病院との共同作業ですが、発端は私自身です。

在宅医療は、末期がんや老衰だけではありません。
未知の病気、病態の発見が、在宅という場である場合もあるのです。
在宅医療に携わる医師の楽しさは新しい発見をすることにあります。

何気なく見逃されれたり、あまり気にとめられない訴えをきちんと
聞きとり新しい病態の発見に繋げていく喜びは探偵や刑事と似ている。
看取るばかりが在宅医の仕事ではありません。

時には、専門病院との連携が重要になります。
病院との共同作業で難問を解決していきます。
いろんな病院や専門医を知っておくことも大切だと思い広く勉強します。

線維筋痛症と分かれば、ネット上から情報が得られます
問題は、そこに辿りつくまでの時間です。
かなり遠回りをしてお出会いする方が大半です。

運動を奨励しますが、痛くて動けない人が多いのです。
私自身は脳の過敏症が本質ではないかと考えています。
現在進行形の仕事を、少し紹介させていただきました。