《0900》 「余命を知らない父をそのまま逝かせたい」 [未分類]

昨日は、京都で開催されている日本看護学会で
講演とシンポジストを務めました。
病院と在宅医療をどうつなぐのかを話ししました。

病院のお医者さんや看護師さんは、在宅現場を知りません。
病室での患者さんの顔と自宅での顔が違うことを知りません。
たまには、在宅現場も覗いて欲しいという趣旨の話をしました。

メイン会場の中を見渡しながら男性の数を数えてみました。
男性はたった6人でした。
99%が女性という慣れない場で、汗をかいてきました。

 

【相談】

78歳の父がスキルス性胃がんステージ4と宣告され、
何もしなければ余命3カ月、抗がん剤治療をすれば半年、
と言われました。

どちらを選択したらよいか迷っているときに、『平穏死 10の条件』を知り、
さっそく読みました。
父には余命宣告していません。

先生の本を読み、抗がん剤の副作用は父の最期を苦しめるような気がしており、
私の判断で、担当医に「抗がん剤治療は行わず、自然の経過に任せたい」と
話すつもりでいますが、でも、時間がない中で、まだ正直迷っています。

私の選択は、間違っていませんか。

(相談者・岐阜県/46歳女性)

【回答】

高齢者のがんにどう対峙するかは切実な質問です。
病気の進行度、本人の全身状態、意思、人生観、死生観に
よって方向性が大きく異なります。

絶対、という言葉はありません。
すべて話し合いの中で決まっていきます。
また、一旦決定したことでも、途中変更が可能です。

年齢がおおきな要素になってきます。
お父さまの年齢は78歳とのこと。
ほぼ男性の平均寿命。

平均寿命をすぎたら、何でもありだと思っています。
ですからお父さんの場合、これがいいというものはありません。
充分な医療情報を得て、自由に選べます。

3つの選択肢があります。
抗がん剤をしない、やる。
そして、1回だけやってみて、再度考える。

私の本では「いつやめるか」という問題提起をしていますが
「やらない」ことを勧めているわけではありません。
そこは誤解しないで欲しいと思います。

主治医の言われた「しないと3カ月、したら半年」という説明。
かなり悩ましい数字ですね。
これは、まるで「やりなさい」という意図を感じます。

私のところには、これと同様な相談がよく舞い込みます。
この説明だと、ほとんどの人が、「やる」に傾きます。
主治医としては、「やりたい」のが本音であろうと想像します。

主治医に聞いてみてください。
「先生のお父さんならどうしますか?」
「先生自身ならどうされますか?」

腹を割ってもう少し話し合われたらどうでしょうか?
ちなみに、私ならやりません。
私の父でもやりません。

 

【PS】

余命という言葉。
過去にこのブログでも書いたように
余命予測は、いい加減なものです。

それと「余命」というから構えてしまう。
私自身も、余命20年くらいです。
あなたも余命30年。

今生まれた赤ちゃんも、余命80年。
人間は生まれた瞬間から、余命に限りがあるのです。
それより、今日1日をどう楽しむかだと思います。

刹那主義ではありません。
現実主義です。
今日の命に感謝して楽しむのみです。

日馬富士のあの日の言葉を思い出してください。