【相談】
「リヴィング・ウィルに興味はあるけれど…
自分の気持ちはどう揺れるのだろう?」5歳年下の妻から読みなさいと言われ、読みました。
昨年、75歳にして大腸ポリープを摘出し、
妻も私の死期を予感しているのかと嫌な気分になりました。しかし長尾先生の本はわかりやすく、納得することばかりでした。
自分もやはり平穏死したいので、リヴィング・ウィルを書きたい
と思うのですが、でも、やはり、死の直前に気持ちが
変わってしまうのではと心配です。リヴィング・ウィルを書いても、延命治療の最中で
「やっぱり最後の最後まで闘いたい」と
気持ちが変わる場合もあるのでは?長尾先生の患者さんに、そういう人がいた場合、
どのように対応したのか教えてください。
(相談者・岐阜県/76歳男性)
【回答】
そんなことは、毎日です。
昨夜「在宅でいきます」と言ったばかりの人が
翌朝一番に電話で救急車で入院することが時々あります。
在宅看取りは日常ですが、
その確認は何度も何度も行っています。
これでもか、という位に。
御指摘のように、人間の気持ちは常に変わるからです。
いろんな情報が入る毎に揺れ動きます。
それが人間というものだと思います。
リビングウイル(LW)の原則は、「いつでも撤回可能」です。
昨日「延命処置は不要」と息巻いていた人が、
翌朝になると180度、逆のことを言い出すひとがよくいます。
LWの有効期限については一定の見解はありません。
日本尊厳死協会では、LWの意思確認を3ケ月毎に、
会報を送付するという形で行っています。
諸外国では1年間くらいは有効だと聞きました。
問題は認知症になった時に、LWはどうなるか。
成年後見人は、財産管理は引き受けるが、LWはどうなのか?
実はまだまだ、法的に未整備なところがいっぱいあります。
しかし超高齢社会を目前に、国民的議論が急がれます。
こうした問題は、毎日のようにおこっているからです。
いずれにせよ、LWや平穏死は、要は好き好きなのです。
それを望むひとだけそうすればいい。
延命治療を受けたくなれば、受ける、でいいでしょう。
日本は、延命治療を受ける権利は保障されていますが、
受けない権利は保障されていません。
ならば、その点も、法的整備されるべきだと考えます。
法律で担保されながら、権利は権利で保障される。
そうなるべきだと願います。
いずれにせよ揺れ動く気持ちに柔軟に対応するのが医療です。