《0909》 「認知症の夫は、胃ろう3回目。もう次はできないと言われました」 [未分類]

【相談】

娘にすすめられてこの本を読みました。
もう少し早く、この本と出合いたかった。 

主人は認知症で今、在宅で胃ろうをしていますが、
今、3回目でもう次はできないよ、
と医師から言われています。 

胃ろうを医師が止めることはできないと
長尾先生は書いておられましたが、「もうできない」
と医師から言われた場合、
その後私たち家族はどのように対応すればいいのでしょうか。
(相談者・大阪府/80歳女性)

 【回答】

胃ろうは、腸を利用した人工栄養法のひとつの方法です。
胃の壁に穴をあけて、ろう孔というトンネルを作ります。
通常は1回ですが、旦那さんは3回もされたのですね。 

きっとやり直さねばいけない事情があったのでしょう。
詳しい事情は分かりませんが、造設術を3回も行った。
胃の前の壁を使いますが、もう刺すところが無いのでしょう。 

胃ろうができないケースは、いくらでもあります。
一番分かり易いのが、胃全摘後のひと。
あと胃の前壁側に胃がんがあるとそこを刺せません。 

胃が胸の中に上がってしまっているひとも出来ません。
食道がんで胃カメラが挿入できないひとも、無理です。
このように、胃ろうができないひとには他の方法を考えます。 

鼻から胃に管を入れる、経鼻胃管による栄養です。
これも胃に入るという意味では、胃ろうと同じです。
これもできないけど、腸を利用する方法がまだあります。 

ひとつは、腸ろう、です。
小腸に胃ろうと同じようなトンネルを作ります。
ただし内視鏡が使えないのでちょっとした手術になります。 

腸を利用した栄養方法ができないときには、
血管を利用した栄養法があります。
中心静脈栄養や、腕からの点滴です。 

ご質問の趣旨は、人工栄養法を継続するかどうかと
いう意味だと思います。
胃ろうが出来なくても人工栄養法は必ず可能です。 

それが可能かどうかではなく、その意味があるのかどうか
ということが質問の趣旨であると推測いたします。
それであれば、意志疎通ができるかどうかが基準になります。 

意志疎通が出来なければ、人工栄養の差し控えも
選択肢になるかと思います。
人工栄養で生きている意味を判断するのは難しいことです。 

しかし本人の生き様、人生観、家族の意見を総合して
人工栄養をやることで本人の苦痛が利益を上回っている

と判断されるなら、差し控えることも選択肢です。 

難しい問題ですが、本人(可能であれば)、在宅主治医や
看護師、ケアマネを交えて、何度か話合いの場を持ってください。
納得、満足のいく人生の最期の生き方を後悔なく選んでください。 

 

【PS】

昨日は、はじめてテレビの生放送を体験しました。
ドキドキで見ていた方はおかしかったと思います。
それでもなんとか、無事役割を果たすことができました。 

始発の新幹線で帰阪中です。
今日は、尼崎で「認知症の市民フォーラム」で講演、司会をしています。  

そのあと、大阪で「在宅と栄養のシンポ」の総合司会と講演をしています。 

明日は、神戸で「がん患者大会」神戸で「がん患者大会」で司会と講演をすることになっています。

 

テレビの反省をする暇がありません。
眠たいです。