《0910》 「胃ろう。ハッピーがアンハッピーに変わるのは?」 [未分類]

【相談】

この夏、認知症の母に胃ろうをつくりました。
そうしないと、特養に入れなかったのです。 

もし、この本にあと3カ月早く出合っていたら、
もしかしたら、特養に入れなかったかもしれません。 

本書の中で、長尾先生はハッピーな胃ろうも、いつしか
アンハッピーな胃ろうに変わる、と書かれてありました。 

母に無駄な苦しみはさせず、先生の言うところの「勇気ある撤退」を
するのは息子の私の役目だと考えています。 

そこでなのですが、だいたい、アンハッピーに変わる期間は
どれくらい、と考えていればいいですか。
(相談者・愛知県/45歳男性)

 【回答】

ハッピーかアンパッピーかは、2つの意味があります。
本人がどう感じるか。
そして家族がどう感じるか です。 

両者が同じとは限りません。
本人はどうみても「止めてくれ!」と言っていると感じても、
家族は「これで充分、幸せ」という場合がいくらでもあります。 

私が思う「アンパッピー状態」の定義は、
 ・意志疎通ができない、か
 ・嚥下が全くできない(自分の唾液さえも誤嚥する)
です。 

さてご質問の、ハッピーからアンハッピーへの移行期間です。
それは胃ろうを造設する時期にもよります。
胃ろうを早く造設するほど、ハッピーな期間が長くなります。 

あと、胃ろうを造設してからの管理によっても変わります。
嚥下リハと口腔ケアをしっかりすれば、
ハッピーな期間が長くなります。 

現実には、「胃ろうを造設したらあとはどこかにお任せ」と
いう場合が多いようです。
私自身も反省するところが多いところではありますが。 

本来、胃ろうは、再び食べられる、再び元気になるためのもの。
「口から食べる」ことを、助けるのが胃ろうの役割です。
広い意味で言えば、緩和医療のひとつという考え方もできます。 

さて、ハッピーがアンハッピーに変わっても、
胃ろうを中止するのは困難であるという現実です。
日本老年医学会の調査では2割の医師が中止経験があるそうですが。 

「あうん」での中止は、何例か私も経験があります。
しかしそれが公になると、私は逮捕されるかもしれないとのこと。
これは、弁護士さんの見解です。 

病院ではより多くの人の目がありますから一般に中止は困難です。
しかし「中止してほしい」という家族が強く望む場合もあります。
そこで、本人のリビングウイルがあるかどうかが問われてきます。 

もしそれがあれば一定のプロセスを経れば中止も可能ではないか。
それを法律で保障しましょう、というのが「尊厳死法制化」です。
あくまで患者さん本人の意志を尊重する法律案が議論されています。 

ちょっと話が飛躍したかもしれません。
ハッピーがアンハッピーに変わる期間に一定の見解はありません。
私自身は、だいたい1年~3年程度かと思っています。