【相談】
父を在宅で看取ろうと考え、長尾先生の本を読んで、
また、アピタルのブログを参考にして在宅医を
いろいろ調べて探しました。隣の市(車で40~50分くらい)に、わりと評判のいい
Tさんという在宅医がいることを知りました。インターネットの口コミなどでも良く書かれていて、
長尾先生ほどではないにせよ、町では評判のようでした。早速電話でお願いをしたら、もっと近くに○○さんという在宅医が
いるので、そちらにかかってくれ、と言われました。だけどせっかくなら、その名医といわれるT医師にかかりたい。
長尾先生は、こういうときどう対応するのか教えてほしい。
(相談者・群馬県/55歳男性)
【回答】
私のところにも、同様の依頼がよく舞い込みます。
しかし、T医師と同じように断っています。
往診や在宅医療には、距離的な制限があるからです。
診療所から16km圏内しか往診してはいけません。
車で40~50分というと、16km圏外でしょう。
おそらく、そのような理由もあり断られたのでしょう。
往診するのは、概ね30分以内で行ける場所です。
車でも、自転車でも、歩きでも、概ね30分以内。
それが往診範囲の大まかな目安とお考えください。
ただし、北海道や東北や離島となると、話が別です。
広大な土地や無医村的な場所は、例外とお考えください。
いずれにせよ、在宅医は近いところで探してください。
患者さんは、遠くの医者が名医に感じるものなのです。
目の前にいい病院があっても、電車に乗ってわざわざ
遠くの、その病院ほどでない病院に行きたいものです。
医者も遠くにいればいるほど、よく見えるものです。
しかし不思議なもので、どんな地域でも、それなりに
いいお医者さんがいるのが、日本の医療の特徴です。
以上は、原則です。
私自身、過去に例外がありました。
都道府県をまたいで在宅医療をしたことがありました。
もちろん16km圏内です。
その都市の全ての病院と在宅医が断ったケースでした。
言葉の通じない(スペイン語)外国人の末期がんでした。
20ほどの医療機関に断られた、
と他府県の民生委員から泣きつかれました。
誰も行かないのなら行きましょう、とお引き受けしました。
そして、医療通訳さんに助けてもらい在宅で看取りました。
都市部でも事情によっては医療砂漠になることがあります。
そんなケースでは、都道府県を越境することもあり得ます。
しかし、やはり近くがいいのです。
お互いに。
遠くの名医より、近くのかかりつけ医、です。