《0918》 「ようやく診て欲しい在宅医を探したけれど」 [未分類]

【相談】

父を在宅で看取ろうと考え、長尾先生の本を読んで、
また、アピタルのブログを参考にして在宅医を
いろいろ調べて探しました。 

隣の市(車で40~50分くらい)に、わりと評判のいい
Tさんという在宅医がいることを知りました。 

インターネットの口コミなどでも良く書かれていて、
長尾先生ほどではないにせよ、町では評判のようでした。 

早速電話でお願いをしたら、もっと近くに○○さんという在宅医が
いるので、そちらにかかってくれ、と言われました。 

だけどせっかくなら、その名医といわれるT医師にかかりたい。
長尾先生は、こういうときどう対応するのか教えてほしい。
(相談者・群馬県/55歳男性)

 【回答】

私のところにも、同様の依頼がよく舞い込みます。
しかし、T医師と同じように断っています。
往診や在宅医療には、距離的な制限があるからです。 

診療所から16km圏内しか往診してはいけません。
車で40~50分というと、16km圏外でしょう。
おそらく、そのような理由もあり断られたのでしょう。 

往診するのは、概ね30分以内で行ける場所です。
車でも、自転車でも、歩きでも、概ね30分以内。
それが往診範囲の大まかな目安とお考えください。 

ただし、北海道や東北や離島となると、話が別です。
広大な土地や無医村的な場所は、例外とお考えください。
いずれにせよ、在宅医は近いところで探してください。 

患者さんは、遠くの医者が名医に感じるものなのです。
目の前にいい病院があっても、電車に乗ってわざわざ
遠くの、その病院ほどでない病院に行きたいものです。 

医者も遠くにいればいるほど、よく見えるものです。
しかし不思議なもので、どんな地域でも、それなりに
いいお医者さんがいるのが、日本の医療の特徴です。 

以上は、原則です。
私自身、過去に例外がありました。
都道府県をまたいで在宅医療をしたことがありました。 

もちろん16km圏内です。
その都市の全ての病院と在宅医が断ったケースでした。
言葉の通じない(スペイン語)外国人の末期がんでした。 

20ほどの医療機関に断られた、
と他府県の民生委員から泣きつかれました。
誰も行かないのなら行きましょう、とお引き受けしました。 

そして、医療通訳さんに助けてもらい在宅で看取りました。
都市部でも事情によっては医療砂漠になることがあります。
そんなケースでは、都道府県を越境することもあり得ます。 

しかし、やはり近くがいいのです。
お互いに。
遠くの名医より、近くのかかりつけ医、です。