《0093》 入れる入れないの選択 [未分類]

筋萎縮性側索硬化症(ALS)という神経難病の方の在宅主治医をしてきました。
全身の筋肉が萎縮して食事や呼吸ができなくなる病気で、10人ほど担当しました。

何度も何度も本人やご家族と悩みながら、延命処置の是非を選択してきました。
最初から人工呼吸器が装着された患者さんを、病院から紹介されることもあります。

複数の訪問看護ステーションと協力しながら、精一杯お世話させていただいています。
延命装置を装着すると、数年間も寿命が延長できるという代表的な病気です。

一方、比較的早期の段階からALSの方の主治医になることもあります。
その場合、自力で食べられなくなり痩せてくると、栄養補給の相談になります。
ズバリ、胃ろうをするかどうか、です。

最初は胃ろうを拒否されていても、イザそうなると希望される方もいます。
気管切開・人工呼吸は、通常胃ろうの後に来る処置となります。
どこまで延命処置をするのか?本当に悩ましい選択となります。

ALSの方の延命処置について明確な考えを持ち合わせていない私には
患者さんの希望に寄り添うことしかできません。

最近、「胃ろうは入れるが、人工呼吸器は付けない」という選択がありました。
なるほど、何となく、分かるような気がします。
しかし、その希望も、またどこかで変わるかもしれません。

当たり前かもしれませんが、食べることと呼吸は別の問題でしょう。
だから、「胃ろうはYESで、呼吸器はNO」という選択肢も悪くはないかも。
そんな人が増えるような予感がします。

日本では国民皆保険制度のお陰で、延命装置をフル装着しての在宅療養も可能です。
外国では皆保険制度がありませんから、延命処置をしたくても無理な場合がほとんどです。
日本は延命処置の保険適応に関しては、寛大な国です。

胃ろう関連器具の発達には目を見張るものがあります。
しかし、一般の方で胃ろうの現物を見たことがある人は少ないのでは?
まず、「見て触って感じる」ことも意外と大事かも。

ある年齢になったら、普段から「胃ろう」について考えておくべき時代でしょうか。