《0937》 パチンコ台の下の穴 ~最期は町医者に帰ってくる~ [未分類]

2人に1人がかんになり、3人に1人ががんで
死ぬ時代と言われています。もはや国民病とも言える
この病気に対して2006年に「がん対策基本法」が
制定されました。
がん検診の啓発され、全国の都道府県に
がん拠点病院が整備されています。 

さらに、がんと診断されたその時から
緩和医療を導入することが提唱されています。
腹腔鏡手術やロボット手術など、もはやお腹を開かずに
テレビ画面を見ながら行う手術が主流になってきました。 

また多くの抗がん剤治療は、がん拠点病院の外来で
日帰りで行われるようになりました。
便利な時代です。 

ピンポイントで、がん病巣を照射できる最新の
放射線療器が開発され、成果を挙げています。
それらを、新聞・雑誌やテレビなど多くのメデイアが
詳細にレポートした結果、医者より患者さんのほうが
最新のがん治療に詳しいという時代になってきました。 

それでも、年間30万人以上の人ががんで亡くなっているのが現実です。
施設ホスピスは常に満床なので、国は在宅ホスピスも勧めています。
どんなに、がん医療が発達しても、最期の最期は、
結局私のような町の在宅医のところに流れてきます。 

私自身、まるで自分がパチンコ台の下の穴のようの感じることが多いのです。
上のピンはがん拠点病院です。治療してきたのは名の通った名医ばかり。
その後、いくつかのがんを扱う施設に弾かれて、最期は私のような町医者に帰ってきます。 

もはや痩せこけて顔色が悪い状態で。 

私自身、町の在宅ホスピス医の一人として、
外来および在宅で多くのがん患者さんを診ています。
正確に言うと、在宅で約500人の末期がん患者さんを看取ってきました。
もっと正確に言うと、死にざまを診てきました。 

毎週、多くの病院から、末期がん患者さんが紹介されてきます。
また毎日のように、メールやよろず相談室にもがんに関する相談が寄せられます。
その多くは、「抗がん剤を止めたいが、どうしたらいいのか?」という内容です。 

今日からしばらく、「抗がん剤の止めどき」というテーマで書いていきます。 

がんの専門医でも何でもない、パチンコ台の下の穴のような町医者から見た、
我が国のがん医療の現実、そして末端医からの提言と考え、
気軽に読んでいただければ幸いです。