《0941》 抗がん剤と副作用 [未分類]

ひとくちに抗がん剤と言っても、いろんなお薬があります。
副作用の強い薬、少ない薬、点滴する薬、口から飲む薬。実に多様です。
最近のトピックスとして、分子標的治療薬があります。 

従来の抗がん剤が、全身に作用するのに対し、
分子標的治療薬は、がん細胞のみ攻撃するという発想です。
戦争に例えるなら、じゅうたん爆撃とピンポイント爆撃です。 

当然、従来薬より副作用が無いかと思いきや、
結構、多彩な副作用に悩まされるのが現実です。 

従来の抗がん剤に分子標的治療薬を併用することが多いですが、
分子標的治療薬単独で用いられることもあります。
抗がん剤の潮流は、分子標的治療薬に向かっています。 

分子標的治療薬は高価です。
1カ月のお薬代が、10万円単位でかかるものが多いようですが、
健康保険が効けば自己負担は1カ月最大8万円ですみます。 

さて、昔、自分がしていた抗がん剤の話をしましょう。
白血病の場合、1~3種類の抗がん剤を投与すると、
2週間あたりから、徐々に骨髄に効いてきます。 

白血球と血小板が減ってきます。
白血球数は、通常4000~8000ですが、1000や500を
下回ると抵抗力が無くなるので無菌室に入りました。 

今は、白血球を増やすお薬を注射すれば2~3日でメキメキ増えて助かります。
一方、血小板は、通常20~30万ですが、3万以下になれば黄色信号です。
鼻血や歯ぐきから出血しやすくなります。 

3万を下回ると血小板輸血をします。10単位というのは、10人の献血分です。
1回献血しても、血小板はほんのわずかしか取れません。
スープの上澄みをすくって集めるような感じでしょうか。 

しかし、血液センターがかき集めた10人分の血小板を、
3日間連続で輸血すると、一時的とはいえ、
血小板は、数万以上に上がり一安心します。
赤血球も同様に、輸血することがあります。 

抗がん剤の治療経過で、白血球や血小板が最も減少する時期があります。
それを「底」と呼びます。2~3週間目です。
その「底」の時期を、いかに支えるかがもっとも大切なポイントでした。 

実際そうです。要するに、人間に毒を盛るのです。
もちろんがん細胞をやっつけるためです。
しかし同時に自分の細胞、つまり味方もやっつけてしまうのです。 

一方、患者さんから見ればそんなことどうでもいい、という感じです。
とにかく「しんどい」のです。
これは関西弁ですが、関東では「だるい、かったるい」でしょうか。 

全身倦怠感といいます。
医者は、当たり前のこととして捕えがちですが、
患者さんにとっては、まさに死活問題です。 

加えて、脱毛、口の中の出血、味が無いなどに悩まされます。
いいことなはど、何も無い状態になります。
精神的にも落ちこむのは当然です。 

昔の抗がん剤治療といえば、ざっとこんなイメージでした。
(続く)