抗がん剤の副作用の中でも、患者さんが辛いと言われるのは
皮膚症状です。かゆみやしびれ、カサカサ、脱毛などの
皮膚の症状を訴えられます。
特に「脱毛」は、女性にとってはとても辛いことです。
在宅医療を依頼される女性には、帽子を被った方が沢山おられます。
私は医師ですから、帽子の下も見せて頂きます。
見事に全部抜けてしまう場合もあれば、
一度抜けきった後にうぶ毛のような薄い毛が生えかけの方もおられます。
大昔に受け持った白血病の患者さんたちは、全員、頭の毛が無くなった。
ある日突然、バサッと抜けてきます。
洗面台が髪の毛で詰まった、と泣いて訴えた人も何人もいました。
本当にお気の毒ですが、「がんと闘う」という大義名分のため、
これくらいは我慢しないと、と諭していました。
私自身なんて酷いことを言ったのか、と後悔しています。
抗がん剤治療の目的は、ズバリ延命です。
治すことは難しくても、延命は可能です。
その延命期間が問題なのです。
たとえ1カ月、3カ月、寿命が延びるのも延命は延命です。
医学的には、「効果あり。その治療法は有効」となります。しかし患者さんは、「もしかしたら治るんじゃないかな」と
心のどこかで淡い期待を抱いているものです。
「たった3カ月の延命効果のために、髪の毛が抜けるんだったら、
抗がん剤はやりたくない。」
そう言われるご婦人が多くおられます。
一方、「いやいや、髪の毛ぐらい抜けてもいいから、
1日でも長生きしたいので抗がん剤をやりたい」と
言われるひとも少ないですがおられます。
メリットとデメリット。どう考えるのかは、個人の選択です。
実は、脱毛を防ぐ方法はあります。
「ディグニキャップ」という名前のヘッドギアのような格好をしたもの。
中に冷却水が流れるヘルメットです。抗がん剤をやる前に、
5度の冷水を流して、頭皮の血管を冷やして収縮させておけば、
抗がん剤による脱毛は大幅に軽減されます。
欧米ではかなり普及していますが、
日本ではまだ一般的とは言えません。
多くの人は抗がん剤をなぜ嫌なのか。
それは、副作用があるからと思います。
逆に言えば、副作用対策はとてもとても重要だということです。
「命が延びるんだから、副作用くらい我慢しなさい」では
患者さんは納得されません。
現在の抗がん剤治療には、副作用対策がとても重要になってきます。
そして副作用対策も、どんどん進歩しています。
(続く)
【PS】
昨日、一昨日と全国から勉強に来られた、
140数名のお医者さんに、
「在宅医療の各論」を講義していました。
「第一回在宅医認定講座」という講座です。
発熱や栄養の管理。緩和医療や終末期医療まで。
私の持っているもの全てを2日間お伝えしました。
ということで、今日は、抜け殻ちゃんです。