がんの三大治療のひとつにあげられながら、
馴染みが薄いのが、「放射線治療」です。
日本においては、手術や抗がん剤に比べて
放射線治療の位置が低いように感じます。
がんの治療に放射線を使う患者さんの割合は、
アメリカでは60%ですが、日本では25%です。
利用率に実に2倍以上の開きがあります。
何故でしょうか?
まず、いきなり放射線科に行く診療システムがない。
他の診療科で作成した紹介状を持って
放射線科を受診する方が大半。
その放射線科の中身です。
放射線科の医師の仕事は、画像診断(CTやMRIを読影する仕事)と
放射線治療に分かれます。
内科と外科では仕事が全く違うように、
放射線科のなかでも、「診断」と「治療」では
放射線科といえども全く別の領域なのです。
日本の医学部の放射線科教授の8割は画像診断で、
放射線治療を専門とする教授は少数です。
従って、医学教育も放射線治療医の養成もまったく不充分なのです。
日本には26万人の医師がいますが、
放射線治療専門医は、たった617人。
(2009年8月)。医師400人に1人の割合です。
2人に1人ががんになり、3大治療を受ける時代であるのに、
非常にお寒い数字です。
80余の医学部のうち、放射線治療の講座を持つ医学部は、
たった12校しかありません。
医学部6年間で放射線治療について習うのは、平均300分程度で、
医師国家試験にも放射線治療ほとんど出題されません。
さらに放射線治療機器は数億円単位となり初期投資は莫大です。
放射線治療機器は高価ですが、それを担当する
医師の診療報酬は驚くべき低さです。
器械は高価ですが、それを操作する医師の時給は、最低レベル。
その結果、放射線治療医を目指す医師は極少数となります。
やはり、医者も人の子。
「儲かる」診療科がどうしても人気があります。
世界の人口は65億人です。
その2%にも満たない日本で、全世界の抗がん剤使用量の20%以上が使われている。
日本のがん医療が、いかに抗がん剤に偏っているか・・・
いいも悪いも、それが現実なのです。
(続く)
【PS】
今日は、朝日カルチャーセンター(中之島教室)で講演します。
朝日新聞関連では、1カ月前にも講演させて頂きました。
2カ月連続の朝日新聞社とのご縁です。
どうせ死ぬならがんがいいか?認知症がいいか?
最後に質問させていただきます。
日曜日のお医者さんへの講演会では7:3でした。