《0954》 分子標的薬治療と事前予測 [未分類]

最近人気がある治療である分子標的治療を紹介します。
これは、がんが作りだす化学物質に対する治療法です。

たとえば、がんが作りだす新生血管を攻撃します。
がんに栄養が行かなくなり、兵糧攻めが出来ます。

そもそも、がんは遺伝子異常の病気です。
がんの遺伝子異常がどこにあるかを見て薬が開発されます。
生存期間を延長できますが、がんを治すことはできません。

胃がんの場合は、Her2という遺伝子が陽性の人には
分子標的治療薬を使ったほうが、寿命が延長します。
シスプラチンと分子標的薬を比較試験したら後者が良かった。

Her2遺伝子が陽性の胃がんは、全胃がんの2割です。
ハーセプチンという薬はHer2陽性の全てに有効ではありません。
8割のひとにはよく効きますが、あまり効かないひともいます。

大腸がんの分子標的治療薬であるアービタックス、ベクチビックス。
K-RAS遺伝子が正常型か変異型かで、効くか効かないかが分かります。
しかし、K-RAS遺伝子を調べてから、このお薬を投与されるのは少数。

乳がんのホルモン治療薬のタモキシフェン(ノルバデックス)について。
これも、CYP”D6遺伝子かあるかどうかで、効くか効かないかが分かる。
CYP”D6遺伝子が正常型なら、がんの再発率は低いが低活性型では2倍多い。

アドリアマイシンという赤い色をした、抗がん剤があります。
脱毛する薬として有名です。
これは、Her2遺伝子が陽性の乳がんには有効だが、陰性の大半には無効。

また、Her2陽性の乳がんに使う、ハーセプチンというお薬は、
すべての乳がんに効く訳ではありません。
高奏功型では8割有効ですが、低奏功型では3割しか効きません。

Her2陰性の乳がんには、乳がんにはあまり使わない薬が効きます。
白金製剤、5-FU系、ナベルビン、アバスチンなどが効くことがある。
ちょっと難しくなりました。

今日は、いろんな専門用語を使ってしまい、スミマセン。
要は、分子標的薬などの抗がん剤は、遺伝子型を調べることで
効くか効かないかを、事前にある程度、予測することができるのです。

【PS】

一昨日は介護家族講座の講師をクリニックを挙げて行いました。
日本慢性期医療協会の主催です。
当院の訪問看護師たちが、患者さん人形を使い実演をしました。

これからの医療は、患者さんやご家族と一緒に作っていく
ものであることを、あらためて、実感しました。
先週も、講演が4日続きました。

寒くなってきました。
感染性胃腸炎(嘔吐・下痢症)が、流行っています。
充分な手洗いを行ってください。

インフルエンザは、まだ流行していませんが、弱っている人は
そろそろ、予防注射をしておいたほうがいいでしょう。
免疫がつくまで1カ月かかるのです。