《0955》 抗がん剤治療を占う遺伝子 [未分類]

現在、肺がんは、がん死亡のトップです
手術や定位放射線治療ができればいいのですが、
遺伝子情報も大切。EGFR とK-RASという
2つの遺伝子変異が寿命を左右するのです。

平均生存期間でみると、
 K-RAS遺伝子変異があると 15カ月
 EGFR遺伝子変異があると 27カ月
というデータがあります。

つまり、遺伝子によってある程度、寿命が変わってくるのです。
ですから同じ抗がん剤治療でいいのか?という議論があります。
当然その人の遺伝子型に合わせた治療法が検討されるべきです。

膵臓がんの抗がん剤として、ジェムザールが標準治療です。
TS-1という飲み薬の抗がん剤も使われます。
両者を併用することもあります。

DCK(デオキシシチジンキナーゼ)という酵素が
がんの中に無ければ、ジェムザールが
効かないことが分かっています。
それは、膵臓がんでも肺がんでも同じことです。

ジェムザールは、抗がん剤の中でも副作用が少ないお薬です。
クリニックの外来や在宅医療で点滴を行うこともある薬です。
しかし、中には副作用が強く、ジェムザールが使えない人も。

実は、チニジンゼミナーゼという酵素があるかないかで、
副作用が出やすいかどうかが分かっています。
もっともそのような人は6%しかいませんが。

TS-1の場合は、DPTという酵素を持つかどうかが大切。
この酵素が少ない人は、TS-1の副作用が出やすいのです。
これはゼローダやUFTなど、5-FU系のお薬も同じです。

さらに、食道がんや咽頭がんのような喉のがんの場合です。
いつも手術か化学放射線療法かという選択肢に迫られます。
実は、遺伝子検査でどちらがいいのか事前に分かるのです

P53遺伝子は、放射線が効き易いかを決定します。
ERCC遺伝子はシスプラチンが効き易いかを決定。
DPD遺伝子はTS-1や5-FUが効き易いか決定。

すなわち、P53、ERCC、DPD遺伝子の3つの
遺伝子を調べることで、事前予想が可能なのです。
効くなら抗がん剤、効かないなら手術となります。

今日は、難しい専門用語がいっぱい出てきて
申し訳ありません。
これくらいにしておきます。

理論上は、遺伝子異常を調べることで、
オーダーメイドの抗がん剤治療が可能な時代になってきたことを
お伝えします。
ただし、これらは現実にはほとんど行われていません。

外科に行けば手術、腫瘍内科に行けば抗がん剤、
放射線科に行けば放射線治療、となってしまうのが現実です。
検査代やどこまで検査をするのか、という問題があるのです。

【PS】

連日難しい話ばかり書いていますが、
現実には、終末期の患者さんの死亡診断書を書く日々です。
理屈と現実のギャップを感じながら書いています。

外来診療も相当忙しくなってきました。
夜診が100人を超えると、冬が来た!という感じです。
感染性胃腸炎で駆け込まれるかたが、とても多い毎日です。