《0960》 分子標的薬の時代 [未分類]

分子標的薬と呼ばれる薬は、攻撃する分子が決まっています。
このお薬の登場で、抗がん剤治療のイメージが変わりました。

がん細胞だけを、効率良く攻撃できるのです。
攻撃する分子があるかどうか調べることで
事前予測も可能になりつつあります。

たとえば、
HER2というたんぱく質があれば、ハーセプチンが効きます。
K-RASという遺伝子変異が無ければ、アービタックスが効く。

分子標的薬の登場で劇的に治療が変わった病気として
慢性骨髄性白血病へのグリベックが頭に浮かびます。
あと、腎臓がんへのネクサバール、スーテントです。

現在使われている分子標的薬は、20種類くらいあります。
大きく3つ位に分けらています。

1 シグナル伝達経路阻害薬
  シグナルとは、自分と同じ細胞を際限無く増殖させる
  信号を出し続けることです。
  EGFR(上皮成長因子受容体)を標的にして結合する
  薬が開発されました。

  肺がんに使われるイレッサやタルセバが代表的です。
  前述した、白血病へのグリベックもそうです。
  大腸がんへのアービタックス、ペクテイビックスなど。

2 血管新生阻害剤
  がんは自分で血管をつくりだして栄養分を取り込みます。
  「血管新生」といいます。
  それを誘導するのが、VEGF(血管内皮増殖因子)。

  大腸がんへの、アバスチンが有名です。
  しかしこの薬単独では、がん細胞を死滅できないので
  通常、抗がん剤と併用することになっています。

3 マルチターゲット薬
  複数のタンパク質に作用する分子標的薬です。
  腎臓がんへの、スーテント、アフィニトールなどです。
  さらに「DAN薬剤」と呼ばれるお薬も開発されています。

分子標的薬が近い将来、抗がん剤治療の主役になりそうです。

【PS】

昨日は、岡山市で3回、講演しました。
中国、四国地方から集まったお医者さんに
在宅医療のお話を聞いていただきました。

「天国に一番近い病院」を自認する病院理事長と話しました。
病院にも「平穏死」の風が吹いているようで嬉しかったです。