《0965》 胃がんの抗がん剤治療 [未分類]

胃がんは、かつて日本人に一番多いがんでした。
しかし現在は、肺がんに抜かれてしまいました。
私が医者になったころは、日々、バリウム透視の時代でした。

朝一番に大学病院に行って、バリウムの粉末を水で溶かして
泡を取るために、脱気する器械にバリウム水を入れました。
いざ胃透視の時、写真に泡が写っていたら先輩から怒られました。

その数年後には、現在のテレビ画面で診る
電子内視鏡の時代がやってきました。
画像解析度が上がり、小さな胃がんが結構見つかりました。

勤務医時代は、小さな胃がんを内視鏡で削り取っていました。
粘膜の下に水を入れて腫瘍を浮かして、電気メスで切除です。
現在では、ITナイフという方法で早期胃がんを治療します。

腹腔鏡による手術は、二十数年前は胆石が対象でしたが、
その後、大腸がんや胃がんにも行われるようになりました。
しかし、それでもある一線を超えた胃がんには手術をします。

昔ながらの胃全摘手術や、胃の3分の2切除は今も同じです。
それでも取り残しが懸念されたり、再発が確認された場合や、
外科手術が無理だと判断された場合に、抗がん剤が投与されます。

胃がんの抗がん剤治療には10種類くらいの薬が使われます。
現在の抗がん剤治療の主役は、なんといってもTS-1です。
あるいはTS-1とシスプラチンが標準治療になっています。

手術できない胃がんにも、このような治療が行われています。
シスプラチンは、腎機能の悪い人には使えませんし、
大量の点滴を行うので、通常、入院して行います。

私も勤務医時代に、胃がんの患者さんに
シスプラチンをよく使っていました。
強い副作用に泣く患者さんに、やって、いました。

ある日、抗がん剤治療を苦に自殺された患者さんがいました。
主治医としてなんとお詫びをしていいのか、謝ったらいいのか
分かりませんがそれ以来抗がん剤と距離を置くようになりました。

最近の話題としては、HER2陽性患者に使われる
ハーセプチンという分子標的薬が使われることです。
さらに、ゼローダというお薬と併用すると、有効です。

現在、ハーセプチン以外の分子標的薬の中に
もっと有効なものがないか、研究されています。
いずれにせよ、やはり分子標的薬の時代が来ました。

現在、胃がん検診に、ABC検診という概念が入ってきました。
ピロリー菌と有無と萎縮の程度から発がんが予測できるのです。
しかし、やみくもにバリウムを飲む検診もまだ盛んに残っています。

胃がんで死にたくなければ、検診を受けることです。
早期発見、早期治療は、胃がんを見れば明らかです。
できれば内視鏡で検診を受けてください。

口か鼻かは、どちらでもいいです。
塩分が多い日本食の人は、検診を受けてください。
抗がん剤で慌てないためには、とにかく検診です。

検診とは、症状の無い時に検査を受けることです。

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明日の午前も、平穏死で講演します。
午後も、なんと平穏死の講演、です。

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