《0972》 口と喉のがんの治療と抗がん剤 [未分類]

頭頚部という言葉は、一般の方には聞き慣れないでしょう。
口と喉のがんのことです。
口腔がん、舌がん、咽頭がん、喉頭がん、などです。

医学生の時、いちばんショックだったのは、
頭頚部がんの患者さんが入院している病棟でした。
手術により、顔面を失った方を何人か見ました。

実は、現在もずっと在宅現場で頭頚部がんを診ています。
咽頭がん、喉頭がん、口腔がん、舌がんなどの特徴は、
タバコと関連が深いことです。

みなさん、顔面や声を失ってからはじめて、
タバコを後悔されます。
私が「禁煙で人生を変えよう 騙されている日本の喫煙者」
書いたのもそんな動機です。

頭頚部がんの治療は、まず手術です。
一方、放射線もよく効きます。
抗がん剤としては、シスプラチンが用いられます。

咽頭がんの抗がん剤治療として、5-FUとシスプラチンと
タキソテールというお薬が併用されます。
パラプラチンやTS-1やブレオマイシンなども使われます。

喉頭がんでは、手術以外にはレーザー手術が行われます。
若くて、がんが浅くて、短期の治療を希望する人向けです。
早期の喉頭がんは、手術をすることはほとんどありません。

進行した喉頭がんの抗がん剤治療には、5-FU,
シスプラチン、タキソテールの併用療法が行われます。
手術の場合、声帯を残すかどうかがポイントになります。

声を失う事はとても辛いことですから、
できるだけ声を残せる治療法が選ばれます。
声を失った場合は、代用音声という方法を使います。

食道発声、電気喉頭、気道食道シャント法などです。
声を失う可能性がある患者さんは、手術前に食道発声を練習します。
また喉頭摘出術を受ければ、身体障害者3級に認定されます。

口腔がんには、舌がん、歯肉がん、口腔底がんなどがあります。
口腔がんは、70代が多く、男性が7割を占めます。
口内炎と似ているため、早期発見できないことがあります。

早期の舌がんには、手術と放射線療法が用いられます。
放射線療法には、外部照射だけでなく、体内で照射する
小線源療法があります。

小線源療法は、セシウムを封入した針、イリジウムを封入したピン、
金を白金で包んだ金粒子(ゴールドグレン)が使われます。
しかし、この治療法の実施施設は、いまだ少ないのが現実です。

さて、舌がんは術後再発が高い病気です。
1~2年後に、再発が見つかることがよくあります。
局所再発には化学放射線療法が行われます。

遠隔転移があれば、5-FUとシスプラチンと
タキソテールの併用療法が行われています。
しかし舌がんは、抗がん剤が効きにくいがんです。

【PS】
昨日の昼休みに、全国3000人の看護師さんに
在宅医療についての講演をしました。
どうしてそんなことが可能なのか。

衛星中継を使って、全国30カ所の会場に配信される
という研修システムを日本看護協会が持っているためです。
今年で3回目です。

全国から、たくさんの感想メールが届いています。
看護師さんの生の声は、とても参考になります。
機会があれば、またご紹介させていただきます。

今夜は、当院の大忘年会です。