《0982》 抗がん剤の副作用対策 [未分類]

ここまで長々と、いろいろながんと抗がん剤について
述べてきました。

実に、いろんながんがあり、いろんな抗がん剤があることを、
あらためて思い出しました。

ひとくちに、抗がん剤と言っても様々であり、単純にいいとか
悪いとか言えるものではありません。
そして抗がん剤治療が辛いのは、副作用があるからです。

今日はその副作用対策について、再度、まとめてみました。


1)骨髄抑制

骨髄で白血球や血小板や赤血球を造る力が落ちます。
赤血球の寿命は120日、血小板は10日、白血球の中でも
好中球は1日以内とされています。

白血球が500以下になれば、感染し易くなります。
そこで白血球を増やすお薬であるG-CSFが注射されます。
また血小板が少なくなれば、血小板輸血をします。


2)味覚障害

舌にある味雷という味覚のセンサーが障害されます。
また唾液を出す、唾液腺の働きも低下します。
味が分かりにくくなることは、辛いことです。

亜鉛製剤や亜鉛を多く含む食事で対応しますが、
なかなか治りにくい症状です。
これが辛いから抗がん剤を止めたいという人も少なくありません。

3)口内炎

免疫能が低下するので、口の中がただれて、痛みを訴えます。
日常生活の中でお口の中を綺麗にしておく努力が必要です。
歯垢のお掃除や、うがいが大切です。

4)食欲不振

食欲が低下も深刻な副作用です。
全く食べられなければ、体力が低下し治療を継続できません。
味覚障害や口内炎も食欲不振の原因になります。

5)吐き気、嘔吐

これは、シシプラチンとエンドキサンで、出やすい症状です。
大昔は、1日中、ゲーゲー吐いているひとをよく見ましたが
現在は、いい吐き気止めがあるので、あまり心配無くなりました。

5-HT3受容体拮抗剤、ステロイド剤、NK-1受容体拮抗剤
などの、優れた吐き気止めを予め投与しておくと有効です。
従来からある吐き気止めも効果があります。

6)下痢と便秘

下痢が止まらなくなる人もいます。
腸の粘膜も障害されるのです。
反対に、便秘になるひともいます。

7)全身倦怠感

全身倦怠感は多くのひとが訴える症状です。
がんの進行によるものか、抗がん剤の副作用によるものか、
不安やストレスによるものか見極めることが必要です。

病院で外来抗がん剤治療している人が、全身倦怠感で来られます。
当院ではステロイド剤を投与します。
点滴のこともあれば、内服のこともあります。

十全大補湯、人参栄養湯、補中益気湯などの
元気にする漢方薬もよく使います。
訪問看護師さんのマッサージなどの代替医療が有効なこともあります。

8)皮膚や爪の障害

抗がん剤の点滴が漏れたら大変なことになるお薬があります。
アドリアシンやイダマイシンといったお薬です。
不運にして漏れた場合は、ステロイドを局所に打ちます。

分子標的薬のイレッサやタルセバやネクサバールは、
皮膚や爪に障害を起こすことが知られています。
皮疹、爪周囲炎、手足症候群などです。

ステロイド軟膏やハンドクリームを用います。
保湿効果がある入浴剤を入れて入浴して頂きます。
爪の痛みには、ステロイド剤やテーピングが有効です。

9)末梢神経障害

オンコビンやエクザールやナベルビンでは、手足が痺れます。
大腸がんのオキザリプラチンやシスプラチンやタキソール、
タキソテールなどによっても、末梢神経が障害されます。

これはかなり難治性で、強い痛みを訴えることもよく経験します。
リリカや麻薬などの痛み止めを使うこともあります。
ビタミンB6、B12や牛車腎気丸も使いますが、苦労します。

10)間質性肺炎

分子標的薬のイレッサによる間質性肺炎は大変話題になりました。
ブレオというお薬も、間質性肺炎を起こし易いことが知られています。
呼吸困難が出たら一気に悪化することがあるので早期発見が大切です。

以上、10の副作用と対応策を列挙してみました。

読んでいるだけで、イヤになった方がおられるかもしれません。
お薬によってある程度、副作用が予測できるので対策が重要です。

痛みや辛さを抱え込まないことも大切です。
我慢しているうちに、うつ病になるひともいます。
現在いろいろな痛み止めがあるので、我慢は損です。

医師や看護師に気軽に相談してください。
お薬以外のアドバイスも得ることができます。
個人的にはアロマテラピーがオススメです。

さらに、タッチケアの可能性も知ってください。
手で痛いところに触れるのです。
まさに、手当。

患者会、患者サロンなどに参加することも大切です。
私もよく患者会から講演などを依頼されます。
同じ悩みを持つ仲間同志が支え合うことも大変有効です。

PS)

この連休は寒いですね。
何件か往診に呼ばれましたが、
喘息患者さんが軒並み増悪しています。

クリスマスイブの深夜でも献身的に在宅患者さんに
寄り添ってくれる訪問看護師さんに頭が上がりません。
連休中もいつもように、尼崎の街を動き回っています。

今年もあと1週間なんて信じられません。
年賀状もまだだし、まだ何もできていません。
今夜は、大阪で今年最後の講演をしています。