《0993》 原発が不明のがんにも抗がん剤 [未分類]

原発と聞いて、ドキッとした人がおられるかもしれません。
しかし原子力発電所とは関係がありません。
今日は、原発巣が不明ながんの話です。

腹水が貯まって病院を受診。
腹水を試験穿刺し、沈殿物を顕微鏡で見たら
間違いなくがん細胞が発見された。

すなわち、お腹の中いっぱいにがん細胞が広がっています。
普通ならば原発巣は、胃か大腸か膵臓などです。
しかしいくら検査しても原発巣が見つからない。

あるいは、肝臓に沢山の転移巣がある。
あるいは、リンパ節があちこちルイルイと腫れている。
しかし、いくら検査をして探しても原発巣が見つからない。

そもそもがんが広がっているので、すぐに亡くなる場合があります。
亡くなってから解剖して、原発巣がやっとみつかる場合もあります。
しかし解剖しなければ、永遠に原発巣は不明のままです。

そんなアホな、今の医学ならそれ位分かるだろう?
そう思われる人が多いでしょう。
しかし現実に、時々あるのが、この原発不明がんです。

原発巣が小さいのでしょう。
小さすぎてなかなか見つからないのでしょう。
親分は、ドーンと大きいとは限らないのです。

親分は小さく、どこかに隠れていながら、子分がいっぱい
いるような場合もあるのです。
それでも親分は、子分をちゃんと統制しているのです。

原発不明がんの治療は、どうすればいいのでしょうか。
相手の正体(原発臓器)は分かりません。
分かっているのは、腺がんとか扁平上皮がんという情報のみです。

人間で言えば、瞳の色は分かるが、国籍が分からない状態です。
国籍が分からないと、治療方針が立ちません。
仕方ないので、瞳の色だけで、だいたいの抗がん剤を決めます。

よく使う抗がん剤を使って、相手の反応を見る場合があります。
場合によっては、放射線を使って攻撃してみる場合もあります。
国籍不明でも、抗がん剤は使われます。

原発不明がんといえば、いかりや長介さんがそうでした。
私自身は、年に1人くらいの割合で見るがんです。
死亡診断書に書くときに一瞬書きにくいな、と思うことがあります。

家族から「そんなことも分からないのか」という声が聞こえてきそう。
しかし分からないものは、分からない。
正直にそう書いていいのですが、なんとなく気が引ける病名です。

原発不明がんでも、最期の最期まで抗がん剤治療をしていた方を
在宅で看取ったことがあります。
そこまでせんでもええやろ、なんて思いました。

しかし病院の主治医は、抗がん剤治療に拘っていました。
諦めたくなかったのでしょう。
何となく分かる気がしますが、患者さんが可哀そうでした。

【PS】
もう正月気分は、とっくに飛び去っています。
朝から晩まで、いろいろながんと対峙しています。
がんに正月は関係ありません。

連日、普段は会えない子供世代と長々と話をしています。
がんの話は時間がかかるので、1時間では足りません。
正月は時間があるので、2時間くらい話し込んでしまいます。

本人は抗がん剤治療をやめたくても、子供世代が、なかなか
止めさせてくれないのが、日本のがん医療の現実です。
いや、病院の先生もなかなか止めさせてくれませんね。