慶応大学の近藤誠先生について触れてみます。
近藤氏の抗がん剤への主張は一貫しています。
「患者よ、がんと闘うな」ではじまり、
「あなたのがんは、がんもどき」、
「抗がん剤は効かない」、ときて、
「がん放置療法のすすめ」、で一応、完結しています。
「がんと闘うな」で、日本中がハッとさせられ、
「がんもどき理論」に、大きな議論がおきました。
氏の抗がん剤に関する主張は、あまりにも有名になりました。
本当のがんは、転移して死ぬもの。
だからがん検診はまったく意味がない、
放っておいても死なないのは、がんもどき、といった主張です。
多くのメディアで議論が行われ、臨床現場は大混乱しました。
その間、先生を攻撃する医師は大勢いても、擁護する医師は
最近までは一人もいなかったように、記憶しています。
私は、基本的に近藤先生のファンです。
近藤理論に賛成できる点が多いのです。
7割賛成、3割反対みたいな感じです。
近藤先生の功績を私なりに、挙げてみます。
1 コペルニクス的反証
近藤先生の主張は、まさにコペルニクス的反証です。
当然、すべてのがん医療に携わる医者を敵にまわしました。
それでも発信を続けられる先生の勇気と気力に敬服します。
最近、中村仁一先生という強力な賛同者を得ました。
あれだけ多くの市民に受け入れられること自体、市民感覚では
認められているといえますが、医療界ではまだ完全に異端です。
2 がんもどき理論の本質
「がんもどき理論」の本質を私なりに解釈すると、
「治らないものは治らない」に尽きると思います。
すなわち医学・医療の全否定ということになります。
しかし、本物のがんとがんもどきに完全に二分できません。
現実はそんなに単純ではなく、現実との乖離がありすぎます。
考え方は面白いですが飛躍があるので埋める作業が必要です。
3 抗がん剤への警鐘
抗がん剤への警鐘を鳴らし続けたことが、
一番の功績であるかと思います。
近藤先生のおかげで、抗がん剤治療は良くなったと思います。
4 放置療法の提唱
がんに手を加えず、様子を見るだけということは
決して珍しいことではありませんが、面白い言葉を使いました。
ただ「放置療法」という意味を正しく啓発する必要があります。
5 慶応大学の懐の深さ
これだけの反論本を書き続けながら、先生を追い出さない
慶応大学には不思議というか、むしろ懐の深さを感じます。
どこか京都大学の小出先生を連想してしますが、いい大学です。
近藤先生もそろそろ定年が近いと書いてありました。
近藤先生をよく知らないという方には、これまでの集大成
ともいえる「がん放置療法のすすめ」だけでも読んでみてはどうか。
明日は、近藤先生への反論を書きます。
【PS】
お正月は抗がん剤治療もお休みでした。
2週間毎の方は、3週間毎になります。
神様が与えた休息となりました。
そのため在宅患者さんは、いつもより元気です。
明日からまた外来抗がん剤治療が始まります。
我々が、セコンド係りとして支えていきます。
インフルが増えてきました。
当院では、すべてA型です。
手洗いとマスクをお忘れなく。